小売業 2024 年度決算を徹底総括! 軒並み堅調も企業間の格差がさらに拡大?

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)

上場小売業の2024年度決算(24年4月~25年3月に迎えた本決算)では、主要7業態がすべて増収、本業の“稼ぐ力”を示す営業利益では、コンビニエンスストア(CVS)を除いた6業態が増益となった。前年度に続いて、インフレによる単価上昇、インバウンド消費回復の恩恵を大きく受け、好業績が相次いだ2024年決算。各業態の主要な経営指標はこの1年でどう変化したのだろうか。

7業態中6業態が増収・営業増益!

 上場小売各社の業績を主要業態別にまとめたのが図表❶だ。

図表❶主要7業態別2024年度業績

 2024年度の小売業決算で、主要7業態のうち増収・営業増益となったのは、食品スーパー(SM)、総合スーパー(GMS)、ドラッグストア(DgS)、ホームセンター、百貨店、家電量販店の6業態だ。インフレ下で価格転嫁が順調に進んだことに加え、一部の業態ではインバウンド消費が復活。

 また、大手によるM&A(合併・買収)も増収に寄与した。利益面では、水道光熱費の高騰や、賃上げに伴う人件費の上昇などのマイナス要因があったものの、売上総利益の伸びでカバーする企業が目立った。

 そうした中で唯一、営業減益となった業態がCVS。減益の主因は、最大手セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)の不振だ。

 24年度決算は、ファミリーマートとローソン(いずれも東京都)が好決算となった一方で、セブン-イレブンは減収(営業総収入ベース)・減益で着地、業態全体の数値を押し下げた(ファミリーマートは20年11月、ローソンは24年7月に上場廃止しているが、本特集に必要な業績指標を開示していること、また、CVS業態への影響度などを勘案し、数値を掲載している)。

 増収・営業増益となった6業態のうち、とくに利益面で高い伸び率を示したのが百貨店と家電量販店だ。

 コロナ禍の業績低迷から復活し、23年度は好業績が続出した百貨店。24年度もインバウンド消費、高額品の販売好調などに後押しされ、上位企業は軒並み増収増益となり、中には過去最高業績を更新した企業もあった。家電量販店は、コロナ特需の反動減で苦戦した23年度から一転、24年度は主に時短ニーズに応える高機能家電のほか、季節家電や理美容家電の販売が好調に推移し、ほとんどの企業が増収増益となっている。

 全体で見れば、24年度の上場小売決算はおおむね堅調だったといっていい。ただし注意したいのは、同じ業態でも企業間の格差が広がり続けているという点だ。これまで業界内で「強い」といわれてきた企業がその強さに磨きをかける一方、業績がふるわない企業はなかなか苦境から抜け出せないでいる。

営業収益ランキングは大きな変化なし

 続いて、上場小売業の営業収益トップ100社のランキング(図表❷)を見ていこう。

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記事執筆者

小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長

静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ

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