“漂流”から再成長フェーズへ セブン-イレブンの聖域なきビジネス改革の中身
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/スティーブン・デイカス社長:以下、セブン&アイ)は、2026年2月期よりコンビニエンスストア(CVS)事業に経営資源を集中させる。イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)などのスーパーストア事業の売却が決まり、グループで進めてきた構造改革に一定のめどがついたセブン&アイ。好調な既存の施策を水平展開するほか新規事業などにも注力し、新体制のもとで再成長をめざす。
消費マインド低迷が影響し、国内外でCVS事業苦戦
セブン&アイの25年2月期連結業績は、営業収益が対前期比4.4%増の11兆9727億円、営業利益が同21.2%減の4209億円、経常利益が同26.1%減の3745億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同23.0%減の1730億円であった。


営業減益の主因は、国内CVS事業と海外CVS事業の不振だ。日米ともに物価高で消費マインドが落ち込んだことが影響し、とくに上期の業績が低迷した。このうち、国内CVS事業では24年9月に品質を維持しながら低価格の商品を展開する「うれしい値!」などの対策が奏功し、下期は客数・客単価が徐々に回復。ただ、上期の低迷をカバーするまでには至らず、通期では減益着地となった。
グループの構造改革などに伴う特別損失も影響した。セブン&アイでは、グループの中長期的な企業価値・株主価値の最大化に向けて、数年前から事業・資産の選択と集中を進めてきた。25年2月期は北米の不採算店の閉店や、イトーヨーカ堂のセンター出荷型ネットスーパー事業からの撤退などにより、2209億円の特別損失を計上。最終利益を大きく押し下げた。
26年2月期の連結業績予想では、営業収益10兆7220億円(対前期比11.4%減)、営業利益4240億円(同0.7%増)、経常利益3860億円(同3.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2550億円(同47.3%増)を見込む。構造改革が25年2月期でほぼ完了したことで、当期純利益は819億円増と大幅な増益を見込む。

26年2月期は、スティーブン・デイカス新社長のもとで、CVS事業に経営資源を集中させる。イトーヨーカ堂やヨークベニマル(福島県/大髙耕一路社長)、ロフト(東京都/安藤公基社長)、赤ちゃん本舗(大阪府/味志謙司社長)などのスーパーストア事業を統括するヨーク・ホールディングス(東京都/石橋誠一郎社長)は米投資ファンドのベイン・キャピタルへの売却が決まり、25年9月までに手続きが完了する見通しだ。
デイカス氏は「セブン-イレブンは、北米と日本のCVS業界で象徴的かつリーディングカンパニーのブランドだ。北米と日本の平均日販は、競合他社よりも20~30%高い」と強調。そのうえで、店舗や商品、サービスへの投資や改革を進める方針を示した。国内CVS事業では、後述する「SIPストア」で展開する商品やサービスについて、「SIPストアのイノベーションを拡大し、店舗で調理した品質の高い食品をお客さまに提供していく」と述べた。
SIPストアの取り組み、既存店に水平展開へ
ただ既述のとおり、国内CVS事業を担うセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は25年2月期、苦戦を強いられた。チェーン全店売上高は対前期比0.5%増の5兆3697億円で前期並みを維持したものの、直営店売上高と加盟店からの収入などを合わせた営業総収入は同1.7%減の8794億円、営業利益は同6.9%減の2337億円、当期純利益は同4.3%減の2019億円と、減収減益で着地。全店ベースの平均日販は69万2000円(前期+1000円)と微増にとどまった。
期末店舗数は2万1552店。期中に601店を出店する一方で412店を閉店した結果、店舗純増数は189店となっている。

5月1日付けで執行役員だった阿久津知浩氏が社長に就任し、新体制が始動したセブン-イレブン。26年2月期は3つの重点施策を掲げている。その1つめが
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