インフレ、経済正常化で明暗!上場小売業2023年度決算と24年度展望
注目集めるイオングループによる再編
2位イオンの24年2月期の連結業績は、営業収益が同4.8%増の9兆5535億円、営業利益が同19.6%増の2508億円の増収・営業増益だった。主要事業会社の業績を見ていくと、中核事業会社のイオンリテール(千葉県)は増収・営業増益、本誌区分ではGMS業態としているイオン北海道(北海道)も増収・営業増益を果たした。イオン九州(福岡県)は連結決算移行のため、対前期増減率はないものの、単体業績では営業収益、各段階利益ともに過去最高を更新している。
近年グループの稼ぎ頭の1つとなっているウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)は増収・営業減益。コロナ関連需要の反動減の影響で売上総利益が計画を下回り、営業利益が前期実績を下回った。
イオングループで注目されるのは再編の行方だ。イオンは23年11月に、SMのいなげや(東京都)の持分保有比率を17.01%から51.0%に引き上げ、連結子会社化している。今後は24年11月をめどに傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)といなげやを経営統合するとしており、統合が実現すれば、いなげやはマルエツ(東京都)、カスミ(茨城県)、マックスバリュ関東(東京都)に並ぶU.S.M.Hの4つ目のSM事業会社となる見通しだ。
さらにイオンは24年2月、ウエルシアHDとツルハホールディングスとの経営統合に向けた協議を開始することで合意したと発表した。この経営統合が実現すれば国内初の2兆円規模のDgS連合が誕生することになる。すでに上位集中が進んでいるDgS業界だが、今回の発表がまた新たな再編の呼び水となる可能性もありそうだ。
インフレで競争に変化? どうなる2024年度決算
小売業の24年度決算はどのような結果になるのだろうか。各社が公表している23年度の業績予想を見ると、好業績を見込んでいる企業が多いようだ。23年度は苦戦が目立ったHC、百貨店も24年度の業績予想では増収・増益を計画している企業が多い。
22年3月頃から続く円安は出口が見えず、水道光熱費をはじめ各種コストは依然高止まりしているものの、足下ではインフレに対する消費者の受容が広がっており、「価格以外」の価値を訴求しやすい局面に入っているととらえることもできる。ここ数年は低価格訴求を強みとする企業がパイを奪うかたちで成長を続けてきたものの、この先はこれまでとは違う競争が見られる可能性も高そうだ。
本誌毎年恒例の「決算ランキング」特集では営業収益だけでなく、ROAやROE、総資産回転率、売上総利益率、在庫回転率、時価総額といった経営指標のほか、既存店売上高や期末店舗数といった小売経営において重要なデータを主要業態別にまとめている。各業態各社の業績指標を読み解けば、強さの理由が浮かび上がってくるはずだ。
インフレに人流回復、インバウンドとさまざまな要因が絡まり、業態間だけでなく、企業間の格差も鮮明にあらわれた23年度決算。勝ち組、負け組を分けた要因は何だったのか。各業態各社の業績指標から読み解いていただきたい。
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