2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行とともに、外出機会の増加、インバウンド需要の復調などで、アパレル業界では売上が回復している。23年は洋服の世帯支出額も20年以降で最大となった。大手の販売も好調に推移しており、23年度は多くが好業績を残す公算が高い。
しまむらの24年2月期3Q累計、売上高、各利益が過去最高を更新
2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行とともに、外出機会の増加が需要を刺激し、アパレル業界では売れ行きが回復してきている。
経済活動の正常化が進み、外出や旅行機会の増加、インバウンド需要の復調などがその要因だ。
家計調査によると、1世帯当たりの洋服への支出額は、コロナ禍に入った直後の20年は前年から一気に年間1万円以上を減らした(19年5万4975円⇒20年4万6805円)が、その後、コロナの落ち着きとともに、少しずつ持ち直しを見せている。23年の世帯当たりの洋服への支出額は20年以降では最大となった。
とはいえ、コロナ禍直前の19年と比べれば8000円以上少ない。今後、支出額が増え、19年の水準に近づいていくことは考えにくい。というのも、ユニクロをはじめとするSPA(製造小売)モデルによるファストファッションをはじめ、手ごろな価格で購入できる商品が、アパレル市場で大きなシェアを獲得していることに加え、コロナ禍で加速されたECを介した二次流通市場(メルカリなどのCtoCや、中古品の買取販売など)の普及も影響しているからだ。
業界トップのファーストリテイリング(山口県)は、圧倒的な成長を続けている。23年8月期は当初予想を上回る大幅な増収増益、3期連続で過去最高の業績を残した。売上収益は2兆7665億円(20.2%増)、営業利益が3810億円(28.2%増)だった。22年8月期に減収だった国内ユニクロ事業も9.9%の増収、EC売上高は2.3%増の1338億円となり売上構成比は15.0%を占める規模になった。同社の24年8月期通期の売上収益は10.2%増の3兆500億円を予想している。
プライベートブランド(PB)とサプライヤーとの共同開発ブランド(JB)の強化を進めるしまむら(埼玉県)は、24年2月期第3四半期(3Q)連結累計は、売上高、各利益ともに過去最高を更新し、売上高は4796億円(3.4%増)、営業利益456億円(2.5%増)を計上した。3Q累計の売上高に占めるPBの比率は22.0%、JBは9.0%となった。通期連結業績は、売上高6350億円(3.1%増)、営業利益545億円(2.4%増)を見込んでいる。
アダストリア(東京都)とAOKIホールディングス(神奈川県:以下、AOKIHD)は、第2四半期決算発表時に通期業績予想を上方修正している。
アダストリアの3Q累計の単体既存店売上高伸長率は9.6%増、売上高は11.6%増の1616億円。国内EC売上高は13.1%増の509億円、3Qの3カ月間(23年9~11月)のEC売上比率は30%に達している。また、自主開発の衣料品事業からの撤退を決めている、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂(東京都)に今後、アダストリアが衣料品の提供を行うことも明らかになった。
人流回復、オフィス出社への回帰が進むなか、ファッション事業の既存店が好調に推移しているAOKIHDは、24年3月期に3期連続の増収増益を予想しており、20年3月期を上回る売上を見込む。
2022年度大手業績、外出機会が増え、好調に推移
間もなく、23年度決算が発表になる。好調企業の勢いはどこまで続くのか、コロナ禍からの回復は見えたのか。各社の決算発表を前に、22年度決算での売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。
22年度決算では、「まん延防止等重点施策」の解除や、政府の旅行支援により外出機会が増え、衣料品の消費意欲が回復。増収企業が多くを占めた。
売上首位のファーストリテイリングの22年8月期は、売上収益が前期比7.9%増の2兆3011億円。当期純利益は60.9%増の2733億円だった。海外ユニクロ事業が北米と欧州を中心に好調で、20.3%増の1兆1187億円と大幅増収。国内ユニクロ事業は冬物商品が欠品した影響で同3.8%減の8102億円だった。
2番手のしまむらは単体売上高が5.4%増の6093億円、当期純利益は7.2%増の378億円だった。主力の「しまむら」を含む5業態すべてで増収だったほか、台湾の思夢樂事業の売上高も11.8%増と、前期に続いて増収を果たした。22年秋にリリースした公式アプリのデジタル会員数は年度末で309万人に達した。
第3位はアダストリア。売上高は13.0%増の1967億円。当期純利益は49.1%増の66億円だった。外出需要の増加を背景に、「グローバルワーク」をはじめとした主力ブランドが業績を牽引した。
国内EC事業の売上高は8.9%増の626億円で、国内売上に占めるEC化率は28.7%。自社ECサイトの「ドットエスティ」も成長を続けており、会員数は23年2月末時点で1550万人だったが、24年2月期3Q末時点では約1710万人にまで拡大している。