[東京 5日 ロイター] – 東芝は5日、2021年3月期の連結営業利益(米国基準)が前期比15.7%減の1100億円になりそうだと発表した。新型コロナウイルスの影響900億円や構造改革費用200億円を織り込んだ。リフィニティブがまとめたアナリスト予想の平均は1367億円。
コロナの影響は、生産体制が中国で4月、欧米やアジアで6―7月ごろ回復し、需要はリーマン・ショック時と同様に世界的に1年以上落ち込むと想定した。極端な為替変動はなく、感染第2波の経済影響を限定的と仮定した。4―6月に460億円、7―9月に220億円、下期に220億円の影響をそれぞれ見込む。
車谷暢昭社長・最高経営責任者(CEO)は電話会見で、営業損益は「上期に100―200億円の赤字になる可能性がある」と述べた。経済の回復状況次第では予想より影響が軽微になる可能性があるとした。
コロナ影響や一時費用を除いた「コア営業利益」は2200億円の予想で、前期の1616億円からは増益となる。
20年3月期の年間配当は1株あたり20円、21年3月期は未定。車谷社長は、資本政策や株主還元の考え方は不変としたが、コロナ影響や第2波のリスクに備え、当面は財務の安全性を重視したい意向を示した。その上で「秋ごろ鎮静化しているなら、株主還元や成長投資を含むより積極的なキャピタルアロケーションを検討したい」とした。
保有するキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)については「株主価値最大化の観点から最適な案を追求していきたい」と述べるにとどめた。
期末日為替レートは1ドル105円を想定する。
20年3月期の営業利益は前の期の約3.6倍となる1304億円だった。車谷社長は「基礎収益力強化は取り組みの成果が目に見える形で表れてきた」と述べた。コロナ影響203億円や構造改革費用108億円が重しとなったが、各事業の収益性が改善した。19年度の受注高は前の期比17%増と堅調で、20年3月末の受注残は19年3月末に比べ7%増となった。
コロナ影響は、中国向け半導体製造装置の設置遅れやデバイス需要の減少のほか、中国でのロックダウンで出荷遅れの影響などがあった。
純損益は1146億円の赤字だった。最終赤字は3年ぶり。LNG事業の売却に伴う損失やキオクシアの持分法損益の悪化などが響いた。前期はメモリー事業売却益で1兆0132億円の黒字だった。
新たな事業セグメント
東芝は、新しい事業セグメントを導入することも明らかにした。車谷社長は「長年、製品軸の事業体の集まりだった。いわゆる総合電機のモデルを戦後、標榜していたが、インフラサービスカンパニーとして各セグメントの収益構造を抜本的に変えていきたい」と述べた。
産業分野別に発電、鉄道など約20の事業体に分かれていたセグメントを、機能別に4つのビジネスに整理する。投資家の理解を得られやすい体制とし、株価の適正な評価につなげたい考え。
インフラの長期の保守・更新を手掛ける「インフラサービス」を中核と位置付ける。半導体やモーターなどのデバイスでインフラシステム構築の競争力を強化し、インフラサービスの拡大を図る。インフラサービスで得られるデータを「データサービス」で活用し、インフラサービスの品質・効率改善のほか、デバイスやインフラ構築の差別化に生かす「シナジーのループ」(車谷社長)を想定する。
データサービスの成長余地が大きいとみており、3―5年後の収益の中核と見据え全体の成長を図る。今秋をめどに詳細を詰め、来年度からの運用開始を目指す。