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逆風下のマルエツ、総菜で反転攻勢へ!

18年度の決算で減収減益となるなど、低迷を見せるマルエツ(東京都)。大手スーパーとの競争が激化するなか、とくに既存店の売上が芳しくない。そうしたなかで、再成長のカギとして本腰を入れるのが総菜部門だ。

まさかの減収減益決算で総菜改革に本腰

 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)傘下のマルエツが逆風にさらされている。19年度2月期の業績は、U.S.M.H傘下の3社の中で唯一の減収減益となり、既存店売上高も対前期比1.4%減。売上規模が大きいだけに、マルエツの不調がU.S.M.H全体の業績に与えた影響は少なくない。

 不振の大きな要因の1つは、商勢圏での競争激化にある。とくにライフコーポレーション(大阪府)やサミット(東京都)といった有力食品スーパーが東京23区内での出店を加速しており、マルエツは厳しい戦いを迫られている。193月に同社のトップに就任した古瀬良多社長は、「(都心部の店舗で)店長が自信をなくしている」と発言しており、名前こそ出さなかったものの、ライフやサミットによる影響が少なからずあることを示唆した。

マルエツの18年度の業績は減収減益と低調に終わった

 逆風をはねのけ、再成長を図るために古瀬社長が重視するのが総菜の強化だ。「総菜は、社内でも長年『頑張ろう』と言ってきていながらも低迷している」(古瀬社長)。もちろん、同社は総菜にまったく力を入れていないわけではない。たとえば、1710月オープンの「大久保駅前店」(千葉県習志野市)では総菜の対面販売にチャレンジしたほか、生鮮素材を使った商品開発に注力するなど、さまざまな手立ては講じている。

 そこからすると、古瀬社長の言う「低迷」は厳しすぎる評価かもしれないが、しかし、爆発力のある商品や、競合他社に比べて集客力の高い売場が生み出せていないというのも事実なのだろう。もともと青果を中心に生鮮3品を強みとする“スーパーらしいスーパー”といった趣が強かったマルエツだが、社会環境や競争環境の変化に対応するうえで、“総菜改革”に本腰を入れる考えを示したのである。

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最新店にみる総菜改革の最前線

 強い単品を育て、SKU拡大

 627日、マルエツは東京都新宿区に新店「江戸川橋店」をオープンした。東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅、東西線「神楽坂」駅から徒歩圏内にあり、周辺にはマンションやオフィスが立ち並ぶ好立地。売場面積は約370坪で、1階が出入口と駐車場、2階が売場となっており、いわゆる「ピロティタイプ」の構造だ。半径1km圏内にはマルエツのミニスーパー「マルエツプチ」が3店舗あり、それらを補完する「このエリアにおけるフラッグシップ的な位置付け」(古瀬社長)の店舗である。

江戸川橋店の総菜売場。マルエツの総菜への本気度が伺える

 この江戸川橋店、マルエツの「総菜強化」の本気度を強く感じられる店舗となっている。総菜部門の売上高構成比は12.6%と同社としてはかなり高いことに加え、実際に売場を見てみると、とにかくSKUの豊富さが目を引く。

 たとえば、主通路上に設置した平台では、魚総菜と肉総菜を集積(江戸川橋店では双方とも総菜部門による調理)。このうち魚総菜は、魚介類のフライや塩焼き、煮付けなど、肉総菜は唐揚げやトンカツ、ローストチキンなどが並ぶ。古瀬社長がとくに推すのが、スーパーの総菜としては珍しい「牛もも肉の赤身ステーキ」。米国産牛肉の「イチボ」の部位を使い、赤身肉ならではの旨味と柔らかさが特徴だ。 

スーパーの総菜では珍しいステーキも販売

 さらに、「洋風総菜」の括りでまとめられたコーナーでは、パプリカを丸々1個使用した「パプリカの肉詰め」(税抜398円)、「鶏胸肉のスチームチキン」(同398円)、「ラタトゥイユ」(同298円)のほか、総菜部門で焼き上げる薄型のピザ(同500円/1枚)などユニークな商品が並ぶ。

 弁当は、健康志向に応えた商品も多い。複数の商品で白米か雑穀米の2種類を選べるようになっているほか、話題のカリフラワーライスを使った商品、さらに、ご飯の量を抑えて主菜と野菜を充実させた「彩りベジ弁当」などを揃える。

 「こうした取り組みのなかで強い単品をつくり上げ、SKUを拡大していきたい」と古瀬社長は力を込める。

“三遊間”のサラダを主力商品に

  このほか、販売に力を入れているのが青果部門で店内加工するサラダで、青果売場だけでなく、総菜売場でも壁沿いの冷ケースを使って販売する。このうち、「フレッシュサラダ」「彩りツナ&コーンサラダ」「15品目のバランスサラダ」などベーシックな商品は小パックで98円と割安な価格で提供。そのほか、「こんにゃく麺」を使ったサラダや、カット野菜をふんだんにちりばめた「冷製スープ」など、さまざまな野菜の食べ方を提案している。

 古瀬社長は「サラダは青果と総菜の狭間にあった“三遊間”のような商品群で、マルエツはこういう商品が少し弱かった」と指摘。「たとえばマルエツプチで98円のフレッシュサラダを並べることができれば非常に大きい」(同)として、下期中にはマルエツプチを含め、全店で販売を開始する計画だという。

サラダのバラエティも豊富

  高品質の生鮮食品を得意分野として成長を遂げてきたマルエツ。しかし社会環境や競争環境の変化による影響が、業績という具体的な数字で示された今、総菜のテコ入れを図ることで新たな成長軸をつくり出そうとしている。ライフやサミットといった強敵を前に、マルエツは総菜を新たな得意分野にできるか注目だ。