鮮魚専門店「sakana bacca」のユニークな差別化戦略とは?

文・構成:西岡 克(フリーランスライター)
取材:阿波 岳 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

水産品のEC事業などを手掛けるフーディソン(東京都/山本徹社長)は、食品スーパー(SM)の鮮魚売場とは一線を画したユニークな鮮魚専門店「sakana bacca(サカナバッカ)」を展開している。高鮮度の鮮魚を産地などから直接仕入れ、東京では希少な魚種も扱い、漁業産地の活性化支援も行う独自の業態を確立している。「サカナバッカ」の現状と今後の展開を探った。

全国の産地から多くの魚種を仕入れる

 フーディソンは、水産品流通のベンチャー企業として、以下の3事業を展開している。

  1. 飲食店向け食品EC「魚ポチ」
  2. 消費者向け鮮魚専門店「サカナバッカ」
  3. 食品事業者向け人材紹介サービス「フード人材バンク」

 これら3事業によって産地での調達から加工・流通、最終的な販売までを一貫して手がける「生鮮流通プラットフォーム」を構築し、持続可能な生鮮流通の実現をめざしている。

 同社の20253月期の売上高は68億円で、そのうち「サカナバッカ」事業は10億円と全体の約15%を占める。「サカナバッカ」は、「いつも新しい発見のある街の魚屋」をスローガンに掲げる鮮魚専門店だ。主な特徴としては、以下の3つが挙げられる。

  1. 多種多様な鮮魚の取り扱い
  2. 市場のような賑わいを演出する売場づくり
  3. 魚や産地について体験できるイベントの開催

 単に「おいしい」だけでなく、魚を「知り」「楽しむ」ことができる店舗をめざしている。同社の強みは、主力事業である飲食店向け食品EC「魚ポチ」の仕入れ機能と連携し、北海道から沖縄まで全国の漁協や産地の仲買人と直接取引を行っている点にある。「魚ポチ」は、全国の産地や中央卸売市場から鮮魚を仕入れ、インターネットを通じて飲食店へ卸している。

フーディソン 執行役員 サカナバッカ事業部部長兼地方創生責任者の木下太志氏

 この仕入れネットワークを活用することで、「各地で水揚げされた新鮮な魚や、豊洲市場では手に入りにくい珍しい魚など、鮮度が高く、都市部ではなかなか出会えない魚種を仕入れることができる」と執行役員である木下太志サカナバッカ事業部部長兼地方創生責任者は胸を張る。

 仕入れは産地からの直送に加え、豊洲市場や大田市場からも行っており、大田市場内には自社の物流センターも構えている。

 また、加工設備を備えた店舗には、包丁を扱える従業員を23人配置。いずれも大手鮮魚専門店や食品スーパーの鮮魚売場で腕を磨いた中途採用の職人が多く、高い加工技術を有する。産地情報や魚の知識にも精通しており、こうしたプロフェッショナル人材を擁している点も、同社の大きな強みとなっている。

 

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取材

阿波 岳 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

大学卒業後、社会の荒波にもまれる日々を経験。そこで書籍や会報誌の編集に携わるうちに、メディア事業への興味が芽生え、今に至る。
趣味は喫茶店巡りと散歩。喫茶店での一杯のコーヒーや、街角の散策を生きがいとしている。
これまで全都道府県を制覇するという小さな目標を達成した。何かを極めたり、制覇したりすることには、なぜか人一倍の熱意を注いでいる。
最近の悩みは、ここ数年で増えた体重との戦い。健康の大切さを意識しつつも、喫茶店のコーヒーに合わせたスイーツや、ランチの大盛りがやめられない。今日もまた元気に「大盛で!」と注文しつつ、明日こそ控えめにしようと心に誓っている。

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