鮮魚専門店「sakana bacca」のユニークな差別化戦略とは?
路面店と駅ナカ店で展開、低利用魚も活用
現在、フーディソンは都内を中心に10店舗を構える(2025年7月時点)。中目黒店(東京都目黒区)、都立大学店(同)、中延店(東京都品川区)の3店舗は路面店で、売場面積は平均約20坪。主に周辺に暮らすファミリー層をターゲットに、品質・鮮度・品揃えを求める比較的所得の高い層に向けて、大手スーパーを上回るクオリティ、品揃えを提供している。
品揃えは丸魚から刺身、寿司、海鮮丼まで幅広く、店内にはガスコンロも設置し、焼き魚などの魚総菜も製造する。さらに、魚を使った珍味や菓子、魚に合う調味料や酒などの加工品も約100品目を展開する。

一方、五反田、品川、新橋、東京、秋葉原などJR東日本の駅構内では、駅ナカ店舗として7店舗を運営。駅ナカ商業施設「エキュート」や「グランスタ」への出店が中心で、売場面積は2~10坪とコンパクト。国内外の観光客やオフィスワーカーを主な利用客とし、寿司や海鮮丼など、すぐに食べられる商品を中心に30~50品目を扱うデリカショップ形態となっている。
このうち、五反田店(東京都品川区)とグランスタ東京店・グランスタ丸の内店(いずれも東京都千代田区)は丸魚を店内で加工・調理して総菜を製造する。そのほかの店舗では、東急大井町線「戸越公園」駅近くの自社セントラルキッチンで製造した商品を毎朝トラックで各店に配送している。
また、ウェブ注文による予約販売も行っており、店頭受取を基本に、年末や節分、ひな祭り、子どもの日などのパーティシーズンに向けた限定メニューを用意している。さらに、法人向けには会議弁当や慰労会向けに、刺身、寿司、ちらし寿司などのデリバリーサービスも展開している。
同社はオリジナル商品の開発にも力を入れている。魚を使った「魚屋のカレー」や、魚をせんべいに加工した「東京さかなせんべい」など、現在約20品目を展開する。

「魚を食べる人が減少している中で、消費者が気軽においしく魚を食べられるようにすること。さらに、なるべく国産原料を使い、添加物の使用を抑えることを開発方針としている」と、木下太志執行役員は話す。
持続可能な生鮮流通への配慮や、社会課題の解決にも積極的に取り組んでおり、現在とくに力を入れているのが「低利用魚」の活用である。「低利用魚」とは、主に他の魚をねらった漁で混獲されることが多く、利用される割合が低い魚を指す。
たとえば、出世魚のコハダが成長したコノシロは、スズキ漁などの際に大量に漁獲されるが、骨が多く調理が難しいため、料理人にも消費者にも敬遠されがちだ。同社ではこれを水産加工メーカーに委託して、つみれに加工。過去には生ハムのようなスモーキーなおつまみも開発した実績がある。
「よりおいしく食べられるように加工し、利用を増やすとともに産地の魚価を上げることで生産者にも貢献したい」と木下執行役員は意気込む。
また、低利用魚を活用したオリジナル商品の事例は他にもある。現在の人気商品は「オオズワイガニ甲羅盛り」や、沖縄方言でイカを意味する「いちゃ」を使った「いちゃキムチー」。さらに、海藻を食い尽くして漁業被害をもたらすアイゴやイスズミといった魚を活用した新商品の開発にも挑戦している。










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