コープさっぽろ大見英明理事長が語る「道内コングロマリット」戦略の全貌

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)
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コープさっぽろ1280

従来の国内生協の枠を超え、今や独自の事業組織体に成長しているコープさっぽろ。それを率いるのが、1998年の経営破綻以降、再建をリードし、その先見性によって道内での確固たる競争優位性を構築してきた大見英明理事長だ。近年進めてきた改革と現在の進捗、そして今後のめざす姿を聞いた。

「生活物資」「インフラ」「医療」の3つで貢献へ

──現在のコープさっぽろを取り巻く事業環境をどのようにみていますか。

大見 英明
大見 英明(おおみ・ひであき)
●1958年生まれ。北海道大学教育学部卒業。82年コープさっぽろ入協(水産担当者)。93年ルーシー店店長。98年水産部長、2000年生鮮本部長。02年理事商品本部長、04年常務理事、06年専務理事、07年理事長に就任(現任)。日本生活協同組合連合会常任理事(現任)、日本流通産業取締役(現任)

大見 179市町村からなる広大な面積を持ち、人口減少が急速に進む北海道は、日本の課題先進地域です。

 北海道の人口は1997年の約570万人をピークに減少が続き、現在の約510万人からさらにスピードを上げて減少していくと予測されています。2024年には世帯数も減少局面となり、いよいよマーケットが縮小する時代に入ります。

 北海道内179市町村のうち人口5000人以下の自治体はすでに70を超え、札幌圏を除く道内全域で小売業が成り立たない状況が起こり始めています。

 地域に住み続ける人々の暮らしが成り立つためには、「食料品を含む生活物資の購入先」「交通インフラ」「医療機関」という3つの要素を解決しなければなりません。コープさっぽろは、これら3つの要素を具現化し、北海道に貢献したいと考えています。

──コープさっぽろは1998年に経営破綻した後、10年で再建し、さらに進化し続けています。

大見 1965年の創設以来、北海道で社会的な役割を積極的に果たし、組合員との信頼関係を地道に築いてきました。98年の経営破綻後も多くの組合員が出資金を引き上げなかったのは、地域の人々がコープさっぽろを見捨てなかったからです。一般の民間企業とは異なり、信頼感や期待感を寄せ続けてくれる組合員の存在があったからこそ今があります。

 このような経緯をふまえて、創立50周年を迎えた2015年に、「これから組合員に対してどのように貢献していくのか」を明示したミッションステートメントを策定しました。「人と人」「人と食」「人と未来」の3つを「つなぐ」ことを掲げています。

 「人と人をつなぐ」という点では、北海道で200万人以上の組合員を組織し、生産者と消費者、中間流通業者を交えた3層をつないできました。また、生産者から中間加工業者、メーカーまでをつなぐことで、「人と食」をつないでいます。

 「人と未来をつなぐ」は、課題先進地域である北海道の社会課題を積極的に解決し、北海道に貢献するために事業を運営していくというわれわれの決意表明でもあります。

 コープさっぽろは、消費生活協同組合法上の県域規制により、

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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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