「リテールと難民支援は、できないとは言えない仕事」 ユニクロの難民支援から考えるヒント

北沢 みさ (MK Commerce&Communication代表)
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「自分ごと化」するためには想像力が必要

左:ウクライナ避難する女性 © UNHCR/Zsolt Balla 右:ポーランドの避難所 © UNHCR / Valerio Muscella

 2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻に対しては、日本企業からの寄付が異例なほど多かったのだという。

 「日本はロシアやウクライナに進出している企業が多いんです。概算ですが、日本企業でロシアに進出しているのは約150社、ウクライナには約50社あります。今回のロシアのウクライナ侵攻でUNHCRに寄付いただいた日本企業が約150社あったのですが、つまり、ロシアやウクライナに対して、自分たちのビジネスと直結していると実感できる企業がそれだけあったということだと思います」(櫻井氏)

 その国に自分たちの従業員やビジネスパートナーがいたら、当然、人の心が動いて、自分ごととして考えやすい。しかし、そうでないとなかなか心が動かない。そういった意味では、ロシアやウクライナには、日本人や日本企業は「自分ごと化」して考えやすかった。その一方で、日本から進出している企業が少ない地域に対しては、支援が届きにくい。

左:チャドに避難したスーダン難民 ©UNHCR/Colin Delfosse  右 :シリア地震 © UNHCR/Hameed Maarouf

 企業だけでなく、メディアについても同じことが言える。

 「モスクワには元々メディアの駐在があるので、メディア側にナレッジもアクセスもありますが、たとえばアフガニスタンにはあまりなく、報道されるボリュームがまったく違ってきます。そしてトルコ、シリアの地震では、トルコ側は日本の企業もあり日本人もいて、メディアのベースもありましたが、シリア側にはあまりないので、シリアについての報道は少なかった。そのように、報道も決して平等ではないので、ものごとを自分ごととして考えるために、やはり想像力を働かせることが必要なのです」(櫻井氏)

 「難民は社会のアセット」という言葉を、取材を通して何度も聞いた。もちろん、難民でなくても、様々なバックグラウンドのある誰もが社会のアセットだ。難民が一人ひとりの人生を生きられる社会を考えるということは、同時に、誰にとっても社会に参加して活躍できる世界を作っていくことなのだと思う。

 次回は、7月24日掲載。東日本大震災の被災者やロシアによるウクライナ侵攻からの避難者、また新型コロナウィルス感染症など、ユニクロの災害支援への取り組みについて取材した。

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記事執筆者

北沢 みさ / MK Commerce&Communication代表

東京都出身、日本橋在住。早稲田大学第一文学部卒業。
メーカーのマーケティング担当、TV局のプロデューサーの経験を経て、
1999年大手SPA企業に入社しマーケティング・PRを12年、EC・WEBマーケティングを8年担当し、ブランドの急成長に寄与。
2018年に独立後は、30年に渡る実務経験を活かし、小売・アパレル業界を中心に複数企業のアドバイザーとして、マーケティングおよびEC業務を支援中。

 

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