「リテールと難民支援は、できないとは言えない仕事」 ユニクロの難民支援から考えるヒント
あらためて「難民」とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見など様々な理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」を指すとされている。紛争や暴力だけでなく、気候変動や自然災害の影響により、故郷を追われた人は増え続けており、その数はすでに1億1000万人に達している。難民問題を自分ごととして考えるヒントについて、国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)の広報官である守屋由紀氏、民間連携担当官の櫻井有希氏に話を聞いた。
本来、日本人は難民に共感できる
1991年、日本人として初めて、なおかつ女性として初めて国連難民高等弁務官に就任したのは、緒方貞子さんだ。そういう人を日本から輩出していながら、一般的には日本は難民問題に関心が薄い、意識が低いと言われている。それはなぜなのだろうか。もちろん、難民が発生している国から日本は陸つながりではないので、物理的に、日本に来ている難民が少ないということは事実だ。
「日本が難民支援に関心が低いかというと、必ずしもそうではないと思います。歴史を紐解いてみると、1970年代後半に始まった、いわゆるインドシナ難民(※)のときから、日本はずっと難民保護に協力していたのです。ボートピープルの中には、日本の九州のあたりにボートで到着する人たちもいましたし、遭難したボートを日本の船が助けて保護したりしていました。または香港でとりあえずの避難生活を送っていた人たちを日本で受け入れる施策もあり、そういう人たちが1万1000人くらいいたんです。中には日本国籍を取得した難民の人たちもいましたし、今日本にその第二世代、第三世代もいます」(守屋氏)
※インドシナ難民
1975年、インドシナ三国(ベトナム・ラオス・カンボジア)では相次いで社会主義体制に移行したが、新しい体制の下で迫害を受ける恐れのある人々や新体制になじめない人々がボートで海上へ逃れたり(ボート・ピープル)、陸路で隣国へ逃れた(ランド・ピープル)。これらの人々を総称してインドシナ難民といい、その総数は 約144万人に達すると言われている。
「それに、日本は小学校や幼稚園から災害教育や避難訓練をやっていますから、災害時には避難所に行くとか、リュックにお水や懐中電灯を入れておくとか、避難ということを子供でも想像できます。そのもう少し先まで想像力を働かせると、難民の方が置かれている状況もわかるはずなんです。ただ、そういうふうにリンクさせて考える教育やメディアの発信が足りていないのかもしれません」(守屋氏)
「やはりコミュニケーションの仕方によって、ずいぶん考え方が変わることがあると思うので、その領域ではメディアが担う部分は大きいと思っています。ファーストリテイリングさんのような企業が難民支援に加わっていただいていることで、その発信力に期待している部分もあります。発信が増えれば、おのずと関心も高まりますので」(櫻井氏)
リテールと難民支援は、「できない」とは言えない仕事
難民支援は、毎日毎日が緊急対応だという。たとえマニュアルがあっても、現場では何が起こるかわからない。そして、目の前の難民に「できません」とは言えない仕事だ。なんとかして、少しでもできることをやらずにいられない。それは、お客を目の前にして、「できません」とは言えないリテールビジネスの現場とよく似ている。
小売業界では、どういう難民支援ができるだろうか。
「リテールであれば、店舗の従業員として難民の方を雇用してくださっている企業様はファーストリテイリングさん以外にもあります。コンビニですと、すでに外国人スタッフがたくさんいらっしゃいますが、それが難民の方でもいいと思います」(櫻井氏)
「一社だけで50人とか100人の難民を雇用するのだと負荷がかかりますが、例えば食品小売でもアパレル小売でも、業界全体で人材不足を埋めていく取り組みとして、難民雇用の制度や仕組みができてくるといいのではないかな、と思います。商工会議所や、その業界の組合で取り組めば、1企業では1人だけでも、組合全体としては100人雇えるといった仕組みができてきて、そうすれば規模の大小にかかわらず、あらゆる企業が参加できる取り組みになるのではないかと思います」(櫻井氏)
「そのほかに、たとえばユニクロさんだとお客様とコミュニケーションしながら難民支援していただく、チャリティーTシャツの販売というやり方がありますが、BtoCであってもBtoBであっても、各企業様の取扱商品やサービスを通じて取り組んでいただくことはできると思います。もちろんそれぞれ会社のカラーや業態が違うので、アプローチは違っていいんです」(櫻井氏)
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