アスリートと取り組む次世代育成 #2 車いすテニス・国枝慎吾選手と歩んだ14年間
ユニクロは、世界レベルで活躍するアスリートたちと、ブランドを体現する「グローバルブランドアンバサダー」として契約している。現在のグローバルブランドアンバサダーは、車いすテニスの国枝慎吾選手、ゴードン・リード選手、テニスの錦織圭選手、ロジャー・フェデラー選手、ゴルフのアダム・スコット選手、そしてスノーボードとスケートボードの平野歩夢選手の6人だ。特筆すべきは、彼らの競技活動をサポートするだけでなく、選手たちと一緒に社会貢献活動、とくに次世代の選手を育成する活動に力を入れていることだ。
2009年よりグローバルブランドアンバサダーの第一号となった国枝慎吾氏に、ユニクロとの関係を取材した。
車いすテニスの次世代育成イベント
2023年4月23日、福岡県「いいづかテニスリゾート」の観客席に、車いすテニスの元世界王者・国枝慎吾選手(以下、国枝選手)の姿があった。この日「いいづかテニスリゾート」では、車いすテニスの世界大会のひとつでアジア最高ランクである「ジャパンオープンテニス」の決勝戦が行われていた。時折うなずいたり手を叩いたりしながら、国枝選手は決勝戦を見守っていた。
その身体を包むのはテニスウェアではなく、ユニクロの「感動ジャケット」である。
グランドスラム車いす部門で、男子世界歴代最多となる計50回優勝の記録保持者である国枝選手は、世界ランキング1位のまま、2023年1月にプロ車いすテニスプレーヤーを引退し、3月には国民栄誉賞を授与された。この日は、ジャパンオープン優勝者への優勝杯授与式のプレゼンターとして出席していたのだ。
優勝杯授与式が終了すると、隣のコートでは、「UNIQLO Next Generation Development Program」が始まった。ユニクロが主宰する車いすテニスの次世代育成イベントの一つで、この日は、国枝慎吾選手と、同じく車いすテニスプレーヤーでユニクロのグローバルブランドアンバサダーであるゴードン・リード選手から直接指導が受けられる。このプログラムに参加するために全国から集まったジュニアプレーヤーたちにとって、きっと忘れられない体験となるだろう。
お互いに世界No.1を目指す
ユニクロが国枝選手をサポートするようになったのは、2009年、国枝選手がプロ転向を宣言したときから始まる。ちょうどユニクロが海外進出を加速していった時期で、お互いに世界No.1を目指す、という目標が一致した。
ユニクロは、2006年にニューヨークSOHO地区にグローバル旗艦店をオープンさせたことを皮切りに、2007年にはロンドン、パリ、2010年には上海にグローバル旗艦店をオープンさせ、その後もシンガポール、台湾、ロシア、マレーシア、タイ、フィリピン、オーストラリア、ドイツ、カナダ、スペイン……と出店を続けていた。
「僕がアンバサダーとして契約した2009年当初は、胸のユニクロのロゴを見た海外の選手から『それどこのメーカー?』と聞かれることが多かった。2011年に錦織選手がユニクロと契約した頃も、まだ同じような反応だったと思います。それが、2012年にジョコビッチ選手(※)が契約した頃には、ユニクロは海外でも知られるようになっていて、『それどこの?』と聞く人はもういなくなっていました。たった3年の間にユニクロの海外進出が進んで、世界中で知名度が上がっていったのを肌で感じました」
選手時代に20年にもわたって、一年中、世界各国のツアー大会を回っていた国枝選手ならではのグローバルな実感だ。
※ノバク・ジョコビッチ選手とのアンバサダー契約は2012~2017年で満了。
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