必ずしも「先手必勝」にあらず? 都市銀行再編の歴史から考える、小売業の合従連衡のゆくえ
都市銀行と小売業の違いは……
だからというわけではないのだろうが、このところの小売業界は、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどを中心に「勝ち馬に乗れ」とばかりに、めまぐるしいまでの企業統合や合従連衡が繰り返されている。
ただ、都市銀行と小売業の違いは、いくつもある。
1つ目は、企業風土や文化の違いだ。カリスマ性を持つ創業経営者に牽引されることによって成長してきた多くの企業の風土には独特のものがあり、企業間同士の融和は簡単には進まない。誰もがイニシアチブを握れない対等合併ならなおのことだ。
2つ目は、多くの小売業は地域に密着しており、地域性の高い商材の比率も大きいという点だ。とくに生鮮食品を主力とする食品スーパーの場合、合併による統合効果を簡単に享受できない可能性も否定できない。
3つ目は、都市銀行は約17行しかなかったが、小売業の場合、売上高1000億円超の企業は132社(『ダイヤモンド・チェーンストア』誌2022年9月15日号)もあり、パートナー探しは限定されたものではないという点だ。
そして、4つ目は、企業規模は大事な要因のひとつではあるが、小売業の競争にとっては、絶対優位とは言い切れないという点である。
しかも、食品スーパー業界に限って言えば、市場は寡占化に向かわない可能性もあり、都市銀行のように迅速に合従連衡に動くことは、必ずしも得策とは言えないかもしれない。
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