トラスコ中山が強化する在庫量×物流力の「独創サービス」

小笠原 玲 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

他社にはできない4つの施策

 今期増収増益を達成するために、トラスコ中山が強化する施策は大きく4つある。

 1つ目が「ニアワセ+ユーチョク」サービスだ。同サービスは、複数の注文商品を1つの箱にまとめて発送するニアワセと、注文商品を販売店経由ではなく、同社の物流倉庫からユーザーへ直送するユーチョクを掛け合わせたものである。2つを掛け合わせることで物流効率を最大化し、納期を短縮しつつ梱包資材、配送運賃、環境負荷、作業負荷を大幅に減らすことができる。

 このサービスの要となっているのが、自動梱包出荷ライン「I‐Pack®」である。同社はI‐Pack®を5つの物流センターの7ラインに導入している。26年7月に稼働予定のプラネット愛知には4ラインを設置する。

 2つ目は置き工具サービス「MROストッカー」だ。工場内のスペースに同社の商品在庫を置く、いわゆる〝置き薬の工具版〞である。在庫はアプリで管理でき、商品は指定の販売業者が自動補充するため、ユーザーは在庫管理や棚卸作業の手間を省くことができる。製造現場のみならず、事務所や建築現場、医療現場にも導入が進み、売上拡大を見込んでいる。

 3つ目は「ユークル」サービスだ。注文した商品を1日でも早く受け取りたいという需要に対応して、販売先経由で注文した商品を、ユーザーが同社の全国に55カ所ある在庫保有事業所で直接引き取れるサービスである。現在は、引き取りの手続きを円滑にするためにアプリの開発を進めている。

 4つ目は災害時に必要な物資を優先的に供給するBCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)に対応することである。中山社長は「東日本大震災時に、いざというときに役に立てないと会社としてダメだと痛感した」と話す。同社は25年4月より専門の部署を設置し、BCP対応に本腰を入れる。災害復興協定を6つの自治体と締結し、25年中にホームセンターなどの大手企業との協業も見据えている。

トラスコ中山の災害時復興支援物資
災害時復興支援物資のアイテム拡大など、BCP対応を強化する

 物流網と在庫力を生かした同社にしかできないサービスを強化することによって、業界最速・最短・最良の納品の実現をめざす。同社は、これらを武器に市場での存在感をさらに高めていく。

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記事執筆者

小笠原 玲 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

早稲田大学文学部(ドイツ哲学専攻)を卒業後、教育系の編集プロダクションで国語の入試問題の制作を担当。2024年、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。

休日の大半を台所で過ごすほど、無類の料理好き。得意な料理は、出汁巻き卵と切り干し大根の煮物。料理研究家の土井善晴氏を尊敬している。

趣味は、ミニシアターで映画をみること。音の大きな映画が苦手で、日常を切り取ったような変哲のない映画やドキュメンタリー映画を好む。見た作品のリーフレットを持ち帰り、コレクションしている。

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