ペット市場、「量」から「質」への転換期 高付加価値戦略で 差をつけろ
人より高価なペット用品
干し芋を食べてみた。わんちゃん用の。
え、こんなにおいしいの―。無添加、砂糖不使用のため、茨城県産さつまいもの自然な甘みが口に広がる。小学生の頃に飼っていた犬のおやつを食べたときの味気のない記憶とは大違いだ。ビタミンや食物繊維も豊富で健康にも良い。
ホームセンター(HC)のペット売場やペット専門店に行くと、とても美味しそうなフードやおやつが並ぶ。最近はケーキや冷凍の総菜、人間のスナック菓子とコラボした商品もある。値段を見ると決して安くない。実際、私が食べた干し芋も、昼ご飯のうどんより高い。

フード売場の隣をふと見ると、カラフルなペットウエアが並ぶ。ピンク色のフリフリしたかわいいものもあれば、ストレッチ性の利く生地でクールなデザインのものもある。私がワークマン(群馬県)の新業態「WORKMAN COLORS」で買った「万能パンツ」よりも高い。
人間よりもペットの方が良いものを食べ、高価な服を着る時代が到来した。ここにペット事業をさらなる成長に導くヒントがあるはずだ。
浸透する高価格帯商品
コロナ禍の巣ごもり需要を契機にペット市場は一時的な特需に湧いた。その後も市場規模は約1.5兆円規模で底堅く推移している。犬・猫の飼育頭数は長期的には犬が漸減し、猫が微増する傾向にあるが、大きく変化はない。
コロナ禍以降見られた最も大きな変化は購買単価だ。実際、ペットフード協会(東京都)の調査によると、2024年時点の犬の1頭当たり月間支出額は約1万5270円で、対19年比32%増。猫は約8930円で、同19%増となった。
一方、HCはここ数年、コストプッシュ型のインフレにより、人々の節約志向が高まり、消費マインドの低下に苦しんできた。物価高で節約志向が高まる中でもペット関連支出を減らさない層が多く、高付加価値なフードや用品、サービスへの需要が高まっている。
つまり、人間自身のための購買行動と、ペットのための購買行動はまったく違うのである。アレンザホールディングス(福島県)傘下でペット専門店大手のアミーゴ(東京都)の中村友秀社長は、「ペットは今や家族の真ん中の『最愛ポジション』に位置付けられている」と表現している。
こうした流れから、ペット市場は「量」から「質」への転換期に入ったといえる。犬猫の総飼育数自体は大きな伸びが期待しにくいものの、1頭あたり支出の拡大と高機能・高価格帯商品の浸透によって市場は緩やかに拡大を続けていくだろう。