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VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由

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各社各様の方向性、「信念」を貫けるか

「家電量販店といっても各社各様になってきた」というのが筆者の最近の印象です。

 たとえば、ヤマダHDは衣食住の住に関して「くらしまるごと」に対応するべく、M&Aで商材・サービスのラインナップを揃える手法をとってきましたが、この背景にはヤマダHDの店舗の立地特性があるのではないでしょうか。

 郊外立地が多く、人口減少、住関連の事業者の集約が中期的に予想できるうえ、エネルギー流通の変革もこれから期待されるとなれば、これに対してリアル店舗でフルラインの受け皿を用意するという同社の方向性は理にかなうと考えます。

 一方、ノジマはヤマダHDに比べて少なくとも家電に関しては都市型立地であり、ヤマダHDの考え方を踏襲する必然性は低そうです。成熟した企業を低コストで買収し、M&Aにシナジー効果を求めすぎず連邦経営を進めながら事業リスクをうまく分散し、仕上がってみれば頑健な事業ポートフォリオのなかでゆるやかな事業間シナジーを発現している企業体を目指しているように思います。

 少し異なるかもしれませんが、将来の事業環境からバックキャストを行い自社経営資源ではカバーできない経営資源を積極的にM&Aで確保していくニデック(旧社名:日本電産、世界最大の総合モーターメーカー)のアプローチはヤマダHDに近いと考えられます。

 一方、基幹事業と親和性が高くなくても安定的な事業に対して高い投資採算が期待できるのであれば前向きに取り組み結果として強靭な事業ポートフォリオへと仕上げるというアプローチをノジマは採用しているように見えますが、これはミネベアミツミ(電気部品メーカー)に近い気がします。

 前者のアプローチの方がストーリーとしては美しい気がしますが、ノジマのような後者のアプローチに基づく成長戦略も大いにあり、と筆者は考えています。

 都市と郊外をともにカバーしECにも力を入れる全方位型のビックカメラ、郊外型で家電量販としてドミナント戦略を磨き直しているケーズHD、ヤマダHDと方向性を共有しながらニトリホールディングスとの連携も進むエディオンなど、業界内で各社各様の戦略に分岐しています。業界内の集約の進んだ現状、戦略の多様化は自然な流れでしょう。

 個社ごとの動向をしっかり見守る必要をあらためて強く認識しています。

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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