連続増収増益途切れ、株価下落のニトリHDの意外な実態と今後

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株式市場の眼差しが厳しい7つのポイント

ニトリ

 株式市場は上記の諸点を当然見定めているにもかかわらず、厳しい反応をしています。

 この背景は以下の7点にまとめられると筆者は考えています。 

  1. 増収増益記録が途切れてしまうと、株価形成において「成長プレミアム」が縮小しその復元は容易ではないこと
  2. 島忠事業は売上高が弱めで売上高営業利益率も2024年3月期は1.8%にとどまっており、ニトリ事業とのシナジー効果が見出しにくいこと
  3. ニトリ事業において買い回り頻度を高める商品施策およびマーケティング施策が奏功しているのかを判断する材料(の開示)が十分ではないこと
  4. ニトリ事業において対法人&リフォーム向けの成長が潜在市場と比較して不十分であるとみえること
  5. 強化が進む海外事業の売上高構成比は全社売上高の4%程度と推察され、その収益寄与について十分な情報がないこと
  6. 海外店舗の50%強が中国大陸に集中していていること
  7. 一時は20%を超えたこともあったROEが10%程度へ低下していること

ファーストリテイリング、良品計画の勝ち筋をどう追うか?

ニトリがマレーシアにオープンした「GURNEY PARAGON MALL店」ニトリのマレーシア店舗 

 このように連続成長神話が途絶えたニトリHDに対して株式市場の要求するテーマは多岐に渡りますが、今後最も重要な点は、「海外事業の本格的な収益寄与によってニトリHDが次の成長ステージに入るかどうか」だと思います。

  ファーストリテイリングや良品計画には、経済成長の著しい時点でしっかり中国大陸で地盤を固め、国内と中国事業の双極体制を構築し、さらに欧米および他のアジアで順次事業基盤作りを進めていったという経緯があります。

  今後同社も同様の成長過程を経ると思われます。海外事業の寄与度が明白になれば、円安を一概にマイナス材料と捉える必要もなくなるはずです。海外事業の投資効率が国内に遜色ないあるいは優れているとなれば、ROEの改善期待にもつながっていくはずです。

  海外の売場面積が全社の10%に近づいてきましたので、売上高も10%を超えてくる日が早晩訪れると思います。その際には海外事業の収益動向についてより積極的なアピールが始まり、株価もこのポテンシャルを再評価し始めることでしょう。株価はだいぶ調整しましたので、これからはポジティブな材料を待つ展開になると筆者は考えています。

 なお、筆者はカチタスおよびエディオンとの協業の深化とそのポテンシャルについて興味深く見守っています。

 

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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