2023年騰落した小売・外食株トップ10と2024年に注目すべき2つの変化とは
外食株が躍進した理由とは
2023年の外食株躍進を支えた第一の要因は、新型コロナウイルス感染症が5月から5類感染症に移行し、人流の正常化が進んだことにあります。ただ、仕入原価、物流費、人件費などの費用面は厳しい状況が続いています。これをIT化と客単価の引き上げでカバーしたことで業績が回復したといえます。厳しい費用環境は外食共通であり、スケールメリットで差が生まれます。これらの企業は、勝ち残りの恩恵を受けていると言えるでしょう。
ゼンショーホールディングスの経常利益の推移を営業外収益の補助金を控除して確認すると、2020年3月期191億円が2023年3月期に213億円と上回り、2024年3月期は上期のみで既に242億円をあげています。開示資料からは完全に解読はできませんが、国内事業の復調に加えて、海外事業の内部成長が利益を押し上げ、さらに国内外での外部成長の取り込みが業績と株価に反映しているとみられます。
同様の構図はサイゼリヤ、トリドールホールディングス、スシローなどを展開するFood & Life Companies、くら寿司などにも当てはまります。
「脱デフレ」の国内で勝ち残り、海外展開を加速する企業が業績を伸ばしつつあり、その将来性もかわれています。これは外食に限らず、小売企業全般、あるいは日本企業全般に求められているストーリーだと思います。
見方を変えれば、「国内勝ち残りシナリオ」×「海外成長シナリオ」を用意できない企業の株価は厳しい推移になると思います。
見逃せない構造変化:
「TOBの日常化」「一億総アクティビスト化」
2023年に見逃すことができないと考える資本市場の変化は、「TOB(株式公開買い付け)の日常化」です。これは流行というよりも、構造変化と呼ぶのがふさわしいと思います。
まずは「TOBの日常化」。小売における最近のTOBといえば、島忠に対するニトリホールディングスの突然のTOBが2020年にありました。もともとDCMホールディングスが島忠のTOBを進めていましたが、ニトリホールディングスがDCMホールディングスが提示した「お値段以上」の買収価格を後出しで提示したという経緯です。
この辺りから、TOBに関して敵対的かどうかなどという表現が減少したと思います。
そして2023年にはTAKISAWAに対してNIDECがTOBを突然発表したり、ベネフィットワンに対してエムスリーがTOBをしかけこれに第一生命ホールディングスが対抗する動きが出てきました。
TOBが淡々と進む時代、TOBが日常風景になったのだと思います。
これは経営者が資本コストを意識した企業価値創造を怠ると容易にTOBの標的になることを示しており、上場企業の規律を強めていると思います。
椎名則夫の株式市場縦横無尽 の新着記事
-
2024/12/16
VAIO買収のノジマ M&A巧者の成長戦略と10年で株価6倍の理由 -
2024/09/24
クシュタール買収提案でセブン&アイがいますぐすべきことと3つのシナリオとは -
2024/08/19
円安修正で国内成長力に再注目!良品計画に広がるチャンスと課題とは -
2024/07/08
アインHD、フランフラン買収で変わる?株主総会の争点とは -
2024/06/07
連続増収増益途切れ、株価下落のニトリHDの意外な実態と今後 -
2024/05/09
小売業界新たなフェーズへ!平和堂の株価上昇が意味することとは
この連載の一覧はこちら [61記事]
関連記事ランキング
- 2024-09-27丸亀製麺がはなまるうどんに大きく差をつけた「逆張り戦略」とは
- 2022-12-19プレナスが創業家によるTOBで上場廃止へ! 今後の上場オーナー企業の在り方を考察
- 2021-10-18焼肉のファストフード化戦略とは?一人焼肉推奨店「焼肉ライク」躍進の秘訣を有村壮央社長に聞く
- 2022-02-09順風満帆から一転、倒産の危機へ ブロンコビリーが窮地から抜け出したきっかけは「お客さまの声」
- 2022-06-17食べ放題を「満腹」以外の価値に転換した、「焼肉きんぐ」躍進の秘密とは
- 2022-12-142席の予約確保に40万円?飲食業界震撼の新サービス「食オク」とは
- 2024-01-19物語コーポレーション、値上げしても売上急増する戦略とは
- 2019-07-19モスフードが高級バーガー店「モス プレミアム」出店、紅茶専門店との複合店舗
- 2019-07-22日本KFC、消費税増税後も店内飲食と持ち帰りを同価格に、本体価格で調整
- 2019-08-28現地レポート!ポルトガルの「フードホール」が世界を席巻し始めた理由