ツルハHDは本当に非上場化に向かうのか?6000億円の資金の出どころとその先は?
ツルハHD、非上場化の狙いは?
直近の有価証券報告書によれば、同社の筆頭株主はイオンで13.59%を保有していますが、オアシスの12.84%を始め複数のファンドが一桁台の株式を保有している模様です。経済合理性を投資行動の基本におくことが多数派である外国人持株比率は40%を超えており、創業家に「モノを申す」株主が居並ぶ構成です。
こうした株主は経営の非効率の改善を促す、いわば「良い外圧」としての役割が期待されますが、他方で今後も継続すべき良い企業文化なども破壊してしまう、いわば「悪い外圧」にもなりえます。さらに、創業家の経営ポジションもリスクに晒されていることは前回の株主総会で見た通りです。創業家から見れば、いったんこうした株主を排除して、企業文化を継承しながら腰を据えて中期的視点で経営を実践したいとの思いに駆られることは無理もない気がします。
しかし、株主総会から半年も経たないうちに非公開化を本格検討するというのはいかがかと考えざるを得ません。外国人持株比率は東証全体で30%強であり、ツルハHDの40%は取り立てて高すぎるとは思いません。足元の業績も巡航速度で推移しています。このタイミングで非上場化をする大義は何か、わかりにくいといわざるを得ません。
6000億円の出どころは?
取締役会長の鶴羽樹氏の持株比率は2.91%と低いため、創業家以外の株式を買い上げるだけでも6000億円近い現金が必要です。ここで買上げ主体の株主の資本効率を考えると、買上げ資金を補充するものとしてツルハHDの借入余力が活用されると考えるのが自然です。幸いツルハHDは実質無借金ですので、現在の借入余力は年間のEbitda(税前利払前減価償却前利益)である580億円程度の5年分に相当する2900億円程度あると推察されます。これに事業効率の改善効果で500億円程度の上乗せができると思いますので、3400億円程度は借入が使えると思います。6000億円という必要額が現実的に見えてきます。
とはいえ、ドラッグストア大手で実質無借金なのはツルハHDだけではありません。マツキヨココカラ&カンパニー、コスモス薬品、サンドラッグ、スギホールディングスはいずれ実質無借金ですし、実質借金のあるウエルシアホールディングスやクスリのアオキホールディングスの残高も年間Ebitdaの2年を下回る限定的な金額です。
こうした競合環境の中でツルハHD一社が突出して負債を抱えることが、ツルハHDの成長力を削ぐことになりかねないのか、慎重な検討が必要ではないでしょうか。
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