株価割安ではないのに…アクティビストが堅実な西松屋チェーンをねらう理由と対応策

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「堅実すぎる」から狙われる理由

西松屋

  しかし、見方を変えると経営自体が堅実すぎるとも言えます。

  例えば、2023年2月期の資産を見ると、現預金が563億円にのぼり、総資産額の43%に上ります。このような現預金の積み上がりは今に始まったことではなく、過去9年間にわたり40%を上回ってきました。つまり出店を続けながらも高水準の現預金が維持されているわけです。

  この規模の現預金が適正なのか過剰なのかはよく考えてみる必要がありそうです。

  子供向けの商品を扱う”社会基盤”を支えるためには、仕入れの半年分を現預金と売掛金で常に確保すべきとするのであれば、なるほど、いま必要な現預金はほぼ550億円です。そして、私なりに試算をしたところ、売上高が+5%程度増収する前提でこの現預金のポリシーを維持しようとすると、配当政策も含めた現在の財務政策を変更する余地は乏しいように思います。

  一方、運転資金を見てみると、異なる姿が見えてきます。

  20232月期の数値を例にとると、売掛金52億円+商品309億円+未着商品21億円=382億円に対して、支払手形4億円+電子記録債務297億円+買掛金107億円=408億円であり、運転資金は仕入れ先等からフルに調達できています。この傾向は9年連続ですので構造的といえるでしょう。差額の最大値は期末ベースで最大76億円の仕入れ債務過多ですので、これを急に現金で支払うとしても100億円手元にあればしのげます。「VUCAの時代」と言うものの、西松屋チェーンの仕入れ・販売力を踏まえれば、この563億円という現預金残高は過剰ではないでしょうか。さらに言えば、100億円の銀行融資のコミットメントラインも未使用で確保されているのです。

  以上、現状積み上がった現預金の過剰感を指摘しましたが、これに加えて今後この残高を積み増す必然性があるのか、という点も改めて検討する必要があります。

 西松屋チェーンの店舗は既に国内1000店に達しており、少子化の進行につれて(増床は別としても)出店の必然性は低下していくと考えられます。同社のEC事業が今後予定される出店を代替することもできるはずです。そうであれば、現預金を今後も積み増す必要は低くなることでしょう。

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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