単なる規模拡大は終焉!「循環経済」下で、ユニクロが採用すべき経営指標とは何か
また私はその後、今でいう「ジェンダーレスファッション」に近い概念を出したが、まだ十分な言葉の武器も持ちえず日本もそれを理解する土壌がない状況下で、これまた学生から大笑いされた経験を持つ。日本で働くことに大きな幻滅をしたことがある。だから、今頃になってSDGsを声高に叫び、「サステナファッション」や「男性用スカート」など、おかしな言葉や商品が世に出回っても、キワモノとしか見えない。また、教会で祈ることも懺悔もしない日本人が「サステナブル」と本来日本人が持つ美しさや思慮深さを忘れ、流行の一つとしてしか捉えられないのでは、本当の意味でのアジアのリーダーにはなれないと私は今でも強く思う。
「経済活動」と「人類存続」はもはや対立概念
もうしばし、哲学的な話にお付き合い願いたい。
私は、人類の経済活動こそ人類の存続を危うくし、人に格差をつけ地球資源を枯渇するまで吸い上げる主要因だと思っている。つまり、人類は経済活動をすればするほど破滅に向かうという考えだ。太古の世界、隕石が地球上の恐竜を絶滅させたように、人類は経済活動、あるいは核戦争で滅亡する。実際、地球の温度は益々上昇し、世界規模で紛争が起き、ナショナリズムが台頭。未知のウイルスや水害・地震などが人類を襲っている。人口は第三世界を中心に爆発的に増え、飽食の時代と錯覚している日本人は、世界中で飢餓が起きていることを知らない。
本稿は小売・アパレル関連の論考であるから、衣料品にフォーカスしていきたい。世界中で衣料品は30%の供給過多(某大手投資銀行ディスカッションより)で、日本に限って言えば200%という供給過剰であり資源の無駄使い以外の何物でもない。環境庁の「サステナファッション」のホームページにも、消費者が購入した衣料のライフサイクルだけが書かれており、もっとも深刻な「売れ残り」について、なんの言及もしていない。普通に計算しても、量的には後者の方が深刻だ。100億枚以上の在庫が日本のどこかに眠っており、アフリカやフィリピンで山のように捨てられ、また、燃やされ二酸化炭素を排出している。
私たちは、「サステナブル社会」、「サステナブル経済」という、本来矛盾する「人類の経済活動」と「地球環境との共生」という相容れない概念を、得意の「考えないこと」で自然に受け入れ、分かったような気分になっている。
ESG経営をすることで、株価が上がるという理屈も不自然で、今のところPERとの相関性は日本では見られない。そして、昨今のSDGsの隆盛を見ると、競争や経済活動そのものは人類を破滅に導き、SDGs活動はその最終期までの時間を短くしているにするにすぎないと私は考えるようになった。
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