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DIYがブームから文化へ!ホームセンター各社は「アフターコロナ」に照準を

DIY革命

第4次DIYブームが到来

コロナ禍になり、外出を自粛したり、テレワークが普及したりなど、われわれのライフスタイルは一変した。とくに、家の中にいる時間が増えたことで、住環境をよくしたいという意識が高まり、「住」分野を扱うホームセンターは追い風を受けるようになった。

中でもDIYはかつてないほどの盛り上がりを見せている。これまでにもDIYには何度か「ブーム」と言われた時期があったが、今回は「第4次DIYブーム」が到来している。過去との違いを比較してみたい。

まず、DIYが国内で注目されるようになった歴史をひも解くと、その始まりはインターネット黎れい明めい期きだった。1990年代にインターネットの掲示板でDIYに関心のある人たちがコミュニティを開設。ある意味、「DIYオタク」のようにマニアックな人たちがインターネットを通じて交流を始めるようになった。この頃はまだDIYという言葉もされておらず、男性中心の「日曜大工」として、一部のDIY愛好家が活動をしていたにとどまった。

日曜大工からインテリアへ

その次の盛り上がりは、2010年代に入ってからだった。「DIY女子」が世間で注目されるようになり、さまざまなメディアでDIYという言葉が頻出するようになった。DIY女子を流行させるきっかけをつくった仕掛け人であるダイナシティコーポレーション代表の山田芳照氏は「当時、『山ガール』や『森ガール』が注目されていたので、テレビ番組で一緒に仕事をしていた女性たちと『DIY女子部』というものをつくってみた。するとメディアからの取材が殺到するようになった」と振り返る。

この頃にはDIYが「おじさんの日曜大工」から「女性もたしなむインテリア」へと変わり始めていった。14年4月には大都(大阪府/山田岳人社長)がDIYを体験できる場所として国内初のリアルDIYショップ「DIY FACTORY OSAKA」(大阪府大阪市)をオープン、翌15年には2号店となる「DIY FACTORY FUTAKOTAMAGAWA」(東京都世田谷区)を出店した。

この2店舗が果たした役割は大きかった。これまでDIYに取り組みたいけれど、やり方がわからない、場所がないという人たちにDIYを始めるきっかけをつくり出した。DIY女子という言葉の流行も相まって、世間のDIYのイメージを変えた。

第3次ブームは「百均ブーム」ともいわれる。百円均一ショップやクラフトショップの結束バンドやグルーガンなどを用いた作品づくりが流行。この頃にはECも普及し始めていたため、足りない材料をECで買い足すということもできた。また、SNSの影響も大きく、安価で手軽に始められる趣味として広がった。

そしてコロナ禍の今回が第4次ブーム。今までとの違いは、YouTubeをはじめとする動画の普及だ。これにより「DIYをやってみたいけれど、やり方がわからない」という普及を妨げていた最大の課題が一気に解決された。動画を通じて、手順や必要な材料、工具を説明してくれるため、今までDIYに取り組んだことがなかった人が新たにチャレンジする土壌が整った。

先陣を切ったカインズ

ホームセンター業界はこのDIYの盛り上がりへの対応が遅れた。資材や工具、金物を取り扱っているものの、そのターゲットはあくまでプロで、10万点も商品があるなかからセルフサービスが基本になっているホームセンターの売場で、DIY初心者が欲しいものを探すのは難易度が高い。

また、DIY初心者向けの商品も取り扱うようになるが、価格志向で「安かろう悪かろう」の商品が多かった。女性向けの工具も軽量で小型の商品が中心だが、スペックが低いとうまく使うことができずに、うまくつくれず、定着しないという負の連鎖が続いた。

その結果、第1〜第3次ブームまで、ホームセンターはあまりその恩恵にあずかることはできなかった。

その中でも、先陣を切って業界で最も早く動きをつけたのがカインズ(埼玉県/高家正行社長)だった。15年4月に「カインズ鶴ヶ島店」(埼玉県鶴ヶ島市)をリニューアルオープンさせ、中型工作機や溶接機、デジタル加工機を導入した「カインズ工房」を設置。ワークショップなどイベントも開催し、DIY初心者にモノづくりを体験できる場所として誕生させた。

HCではいち早くカインズがDIY強化に動いた

17年4月には「カインズ広島LECT店」をオープン。一般消費者が利用しやすいようにプロ向けの売場と分離し、DIY商品を集めた「DIYスタイル」コーナーを設けた。大都と協業し、カインズ工房をはじめとする空間づくりにも磨きをかけた。

カインズは広島LECT店を皮切りに、DIY戦略を加速させる。DIYスタイル向けのプライベートブランド商品の開発を進め、大型店の新規出店や既存店改装でカインズ工房の導入も進めた。19年11月には「DIYer100万人プロジェクト」を始動し、パートナー企業とともにワークショップのメニューやDIY関連サービスを拡充した。

続いてコーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)も動いた。18年7月、DIY商材を中心とした品揃えによりさまざまなライフスタイルに合った暮らしづくりを提案する専門売場として「D・I・Yリノベーションコーナー」を「コーナン岐阜店」(岐阜県岐阜市)で初めて試験的に導入した。幅広いユーザー層に向けてわかりやすく、買いやすい商品を中心に品揃えしたところ、女性客や家族連れなど、従来DIY売場をあまり利用しない客層が多く立ち寄るようになり、販売実績も着実に上がっていった。その後、都市部の旗艦店を中心に既存店でも「D・I・Yリノベーションコーナー」の導入を進め、21年9月現在、20店舗にまで拡大させている。

また、隣接する場所には営業時間内であればいつでも無料で利用できる工作スペース「DIYラボ」を開設。塗装専用ブースも設置され、簡単なリメークから本格的な木工まで、モノづくりを自由に楽しめるようにしている。

アフターコロナを見据えた戦略

これまでの第1〜第3次ブームを通じて、DIYは広く認知されるようになり、女性参加者が増えるなど、すそ野も広がった。

さらにDIYが「ブームから文化」として定着するようになるには、「材料・工具」「体験できる場所」「やり方・ノウハウ」の3つが必要になる。そのうち、「やり方・ノウハウ」はYouTubeをはじめとする動画の普及によりクリアできつつある。材料・工具を買う場所、DIYを体験できる場所の提供の2つがホームセンターに求められる。DIY初心者が材料・工具を買う場所としてHCを選ぶようになるには、プロ向けとDIY向けの売場を区別することと、カテゴリーごとの縦割りではない売場づくりをすることが求められる。いまだに多くのHCの資材・工具売場はプロ中心に考えられており、一般消費者にはわかりにくくなっている。

DIYを体験できる場所も不足している。ホームセンター以外でも、リアル店舗型のDIYショップとして成功を収めているところは数が少ない。その点、HCには集客力があり、DIYに興味がある人が商品を買いに来るだけでなく、工作スペースを使って体験できる場所を提供することもできる。

直近1年間はコロナ禍でイベントやワークショップを自粛せざるを得ない状況だったが、DIYでファンを勝ち取るには「アフターコロナ」を見据えなければならない。デジタルを活用した非接触型のワークショップや、オンラインコミュニティの形成なども可能性があるだろう。

コロナ禍で起きた変化は一時的ではない。DIYが文化として定着するための土壌は整った。ホームセンターもアフターコロナに照準を合わせて、変わっていかなければならない。

 

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