SHEINの秘密、「多品種少量生産」を可能にする広東スマートサプライチェーン網とは?

菊谷 信宏(glotech-trends)
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ユーザー側から見たシーインの魅力とは

シーインのサイト
シーインは現在220の国と地域に1億2000万人のユーザー(2021年6月末)を抱える

 まず、ユーザーが活用するアプリから、ユーザー側から見たシーインの魅力を確認しておきたい。アプリの「新着」情報には、毎日3000~5000程度の新作がアップロードされ、注目商品はアプリ内でインフルエンサーによって動画で紹介される。ユーザーはチャットを活用し、リアル店舗でショッピングを楽しむような感覚でエンタメのような買い物を楽しめてしまう。ポイントやクーポン付与などユーザーが毎日リピーターとしてアプリ訪問する仕組みが工夫され、気がつけばシーインで多くの時間を費やすアプリ設計となっている。

 こうしたユーザビリティもシーインの魅力の1つだが、同社のビジネスモデルの最重要キーポイントは、「いかに多品種の商品アイテムを毎日、廉価に提供しているのか」という点である。この謎を解くためには、シーインの製造プロセスについて考察していくことが重要となる。

中国の地図アプリ「高徳」で確認できた、広東省・番禺(パンユー)にあるSheinの工場
中国の地図アプリ「高徳」で確認できた、広東省・番禺(パンユー)にあるSheinの工場

 シーインの全製造プロセスは、広東省・番禺(パンユー)という古くから中国ファッション産業の屋台骨を支え、多数の繊維工場を抱える「世界のファッション工場」で行われている。シーインは番禺において、主要繊維工場と位置付ける300~400におよぶコアサプライヤーと1000あまりの協力サプライヤーと契約し、かつてどのファッションブランドも設計し得なかった、小さなファクトリーが連動する巨大サプライチェーンを構築しているのである。

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