1坪未満の空きスペースでも行列のできるビジネスに変える、“スキマデパート”とは
すべては不動産ビジネスのお困りごと解決からはじまった
岡部取締役や、同社の幹部の多くが不動産関係のビジネス経験者だ。自動販売機を設置する「スキマ」の物件情報は公開されているはずもなく、ビルのオーナーやデベロッパーと直接取引をしているからこそ、物件を確保でき、次々と新規ビジネスを展開できるのだ。社長の芳屋昌治氏が「スキマ」にビジネスチャンスを感じたのは、原宿のキャットストリートにあるマンションの営業を担当していた時だ。オーナーから「入り口の小さな植え込みスペースにごみが捨てられる。なんとかしてくれないか」と要望があった。芳屋氏はそこを借り受け、近くの店舗の広告案件を受諾することでビジネスが生まれた。「スキマにこれほど価値があるのか」。ビジネスの匂いを嗅ぎつけた。
その後、様々なロケーションを探し、小さなスペースを生かしたビジネスを展開していたが、その時、自分たちの想定を超える地代を支払いながら、ビジネスを展開していたのが大手飲料メーカーの自販機だった。それから数年後、自動販売機ベンダーの会社をM&A(合併・買収)で取得する機会を得て、本格的に自販機ビジネスに参入することになった。業界では、賞味期限が1年に迫った飲料は返品されることになっているが、スキマデパートはそれを独自のルートから仕入れ、安く販売することに成功。買収当初は600台前後だった自販機の設置は、今では5000台近くまで広がった。
「僕たちが大切にしているのは、世の中のモッタイナイを価値に変えることです。飲料も捨てられるのがモッタイナイし、中田さんが開発する香りなどの良い商品もみんなに知られていなければモッタイナイ。他にも世間にある『モッタイナイバリュー』を作っていきたいし、社会がそれが求められているのではないでしょうか」(岡部祥司取締役)
D to C×自販機の可能性
「スキマビジネス」は非対面を実現するからこそ時代にマッチしているのかもしれない。
例えば、オンライン販売がメインのD to C(ディレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドが、ビジネスを拡大するためにリアル店舗への進出を考えた場合、路面店や百貨店に出店すると、コストが嵩み、利益を上げることは容易ではない。「ブランドさんの商品を自販機で販売すれば、リアル店舗に出店する「一歩前」の段階を試すことができると思います。人件費がかかりませんし、施工費も低くて済みますから」(岡部取締役)
実際に、今回の渋谷での「香り×自販機」の設置を機に、「神戸の香り」など、地域に根差した様々な匂いを自動販売機で売るプロジェクトの横展開も考えているという。
コロナ禍において、百貨店や商業スペースのテナント離れが加速する中、スキマデパートには、空いた物件に自動販売機や無人ポップアップを設置して欲しい、という依頼も届いている。今後は、商業施設のフードコートの一角に自動販売機を設置することも構想しているそうだ。岡部取締役は「テナントは『スキマ』とちゃうやろ(笑)」と笑うが、不動産業界がこれまで目を付けてこなかった小さなスペースに付加価値をつけ、売上を伸ばしたスキマデパートの前には、今後様々なビジネスチャンスが転がっているのかもしれない。
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