大木ヘルスケアホールディングス代表取締役会長 兼 社長 松井秀夫
次代を見据え需要創造型の中間流通業をめざす!
──大木ヘルスケアHDのめざす中間流通業は、卸売業とどう違うのでしょうか。
松井 一般に、日本の卸売業はメーカーなどから商品を調達して、小売業などに販売します。いわゆるホールセールやベンダーといった機能です。
一方、中間流通業はもっと幅広い機能を有しています。たとえば、エージェント機能、3PL(サードパーティーロジスティクス:物流機能の全体もしくは一部を、第三の企業に委託すること)、キャッシュ&キャリー(会員制の現金持ち帰り問屋)、ラックジョブ(売場の一定スペースの一切の管理をまかされた問屋)、ボランタリー、コーポラティブ、フランチャイザーといったものは中間流通機能に相当します。
当社の場合、これらに加えて商品開発や店頭での売場づくりといった機能も持ち合わせています。従来の卸売業の枠を超えて、メーカーのプランニング機能から小売業のマーチャンダイザー機能までワンストップで行えるのが当社の強みです。実は、30年以上も前からこのようなビジネスを展開してきました。これからは「届ける」だけの卸売業ではなく、「商品企画から開発、店頭展開まで行う」中間流通業の時代であると強く感じています。
──これからは卸売業ではなく、中間流通業の時代であると考える理由は何ですか。
松井 今までのやり方では通用しない時代になっているからです。超高齢社会と人口減少社会が到来し、高齢者が中心のマーケットに移行しています。これまでのように若いマーケッターだけではニーズはわからないでしょう。
高齢者は年金生活で暮らしが大変というイメージがありますが、内閣府の調査(2011年)によれば、経済的な暮らし向きに「心配ない」と感じる高齢者は約7割。こんなにも認識のズレがあるのです。実際、若いマーケッターが考える高齢者像と、75歳の私が実感するそれとでも大きなギャップがあります。だからこそ、消費者一人ひとりのニーズについて、もっと真剣に深く入り込んで掘り起こしていかなくてはならないと考えています。
──潜在需要を顕在化するために、どんな取り組みを行っていますか。
松井 まず、縦と横の2つの営業系統で組織をつくり、両方で管理することで、ニーズの取りこぼしがないようにしています。縦の組織とは、北海道から沖縄までのエリアごとに営業チームを置き、その下に得意先別の担当を配置するというものです。
一方、横の組織とは、医薬品や健康食品、日用品、一般化粧品、メディカルスキンケア、介護ケアなど取り扱いカテゴリーごとの部署です。健康食品事業部、C&V(コスメ&バラエティ)事業部、快適生活用品事業部など、徐々に増やしていきました。こうした縦と横の組織でもって、メーカーや小売業の方々と一緒になって、ニーズを先読みし、新たな商品やカテゴリーを提案しています。
棚割提案からPB開発まで、新規参入のバックアップも
──メーカーや小売業との協業について、具体的に教えてください。
松井 ひとつには、店舗支援があります。たとえば、食品スーパー(SM)でヘルスケアコーナーを始めたいとき、当社に言っていただければ、商品の仕入れから棚割まで一括して、そのお店にふさわしい内容で提案します。
バイヤーさんの中には「売れ筋を用意して欲しい」と依頼される方が少なくありませんが、店舗によって訪れるお客さまはそれぞれ異なります。世間で「売れ筋」と呼ばれるものが、必ずしもその店で「必要とされるもの」とは限りません。
どんな商品なら、その地域のお客さまに喜んでもらえるのか。どの範囲まで商品を揃えるのか。健康食品は入れるのか、あるいは医薬品まで揃えるのか。そういう細かなところまで一緒に考えて、売場づくりを行うのが当社です。
たとえば、高齢者の場合、1ヵ月分の量で5000円のサプリメントよりも、1週間分で1500円のものを選ぶ人が多いことがあります。コストではなく、使い勝手を優先するのです。そうした実情をアドバイスしながら、商品を選び、棚割を考えていきます。
当社では、青汁だけで40種類以上も揃えています。低価格帯から高価格帯のものまで、産地や素材もさまざまです。インバウンド需要が見込める店舗であれば国産品にこだわった青汁を、庶民的な大型店舗であれば手軽な価格のものを提案します。青汁ひとつとっても提案は店舗によって異なります。大都市近郊にある総合スーパー(GMS)と地方のSMでは、ヘルスケア売場の内容は違って当然です。
その店に合った売場をつくっていかないと、今の時代、お客さまはネット通販(EC)に流れてしまいます。きちんとした「受け皿」をつくることで、お客さまのロイヤルユーザー化にもつながるはずです。