「個」の力を結集し感情に訴える商品をつくる ロッテ牛膓栄一社長インタビュー
味や品質、機能性だけでなく感情に訴える商品をつくる
──「記憶力を維持する」など機能性をアピールした商品に手ごたえを感じられていますか。
牛膓 「機能性表示食品」が実現する「健康」というキーワードが重要であることは確かです。強化ブランドとして挙げた「乳酸菌ショコラ」は「機能性表示食品」であり、「腸内環境を改善」を訴求した商品になっています。
また、販売から20年が経過した「キシリトールガム」についても、今年改めて成分である「キシリトール」の効用をアピールしています。キシリトールは唾液中のミュータンス菌(虫歯菌)を減らすとともに、妊娠中の母親から胎児へのミュータンス菌の感染(母子伝播)を抑制する効果もあります。
そのため、渡部健さん佐々木希さん夫妻によるテレビCMを放映するだけでなく、母子手帳の副読本にキシリトールの説明書を入れてもらうといった活動もしています。こうした商品を通じて社会貢献をしていきたい、という気持ちもあります。
一方で、お菓子は「機能性」があればいい、ということではありません。味や品質はもちろんのこと、お菓子として、消費者の感情に訴える必要性を感じています。
たとえば、当初計画の約2倍、28億円を売り上げヒット商品となった「シャルロッテ」は、機能性をうたった商品ではありません。また、コンセプトである「ヨーロッパのお菓子屋さん」の絵を全面に描いたパッケージには、商品や味の説明がほとんどなく、菓子業界が長い我々経営陣にとっては「わかりにくいのではないか」と思えるものでした。しかし、このコンセプトがお客さまに受け入れられたのです。小売業の皆さまにもパッケージが街並みに見えるように売場に並べていただけているのはありがたいことです。
──販売チャネルや商品の「売り方」に関しては、どのようにお考えですか。
牛膓 お客さまの買い物の仕方へ対応するという意味で、販売チャネルや売り方に対する従来型の考えが通用しなくなってきているように感じています。当社の調査によると、1人のお客さまが5業態、8店舗を平均で利用されているようです。ネット消費を加味すれば、さらに利用店舗数は多くなるでしょう。また、余計なものを買わずにいち早く買い物をすませるスピードショッパーと呼ばれる方が増えてきており、約3割の方が買い物に対してストレスを感じているというデータもあります。
つまり、各店舗で必要最低限のものだけを素早く買いたいというお客さまが多くなってきているということです。一方で、我々の商品は、生活必需品ではありません。菓子は、生鮮3品や総菜など生活に必要なものをすべて買って「ほっ」としたところで買われる最終購買商品です。
これまでも、最終購買品としてご購入いただくために、レジ前の菓子売場をご提案し、全国で430チェーンに導入いただきましたが、次の打ち手が必要です。
どんなチャネルにおいても、必要最低限のものしか買いたくないお客さまの「買い物スイッチ」を押す売場をつくらなければなりません。それは、メーカーのエゴを押し付ける売場ではなく、お客さま起点の売場です。
我々は、今後さらにお客さまが本当に必要とされているものが何かを研究し、小売業の皆さまへ貢献できる方法を考えます。そのためにも、PDCAサイクルを繰り返し回しながら小売業の皆さまと協同していきたいと思います。