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激変するコンビニ事業環境 ローソン、親会社三菱商事の次の一手はあるのか?

時価総額上位50小売企業で 1年前の株価を下回るのは2社 

 ローソンの株価が冴えません。

 年初来から2021年3月末までローソンの株価は+13%上昇し、東証株価指数および小売株指数の+8%上昇を上回っていることから、一見悪くないように見えます。

  しかし過去一年の騰落は▲8%(下落)。足元の小売企業の時価総額上位50社で、現在の株価が一年前の株価を下回っているのはローソンとクスリのアオキのわずか2社にとどまります。

  さらに過去5年間を振り返ると、ローソン株は▲42%もの下落になりました。ちなみにセブン&アイ・ホールディングスは▲7%の下落にとどまります。ローソンの下落率に匹敵するのは百貨店株および一部のアパレル株しかありません(以上、配当は加味していません)。

  172月に三菱商事がローソンを連結子会社化するに至った際の公開買付価格は8650円でした。213月末のローソンの株価5430円ですので、連結化後この公開買付価格から▲37%下落したことになります。

コンビニをめぐる環境の激変

 ローソン株不調の主因は同社の業績推移に求められます。

  ローソンの2月通期決算発表が迫りますが、直近の会社予想などを見ながら連結業績の推移を確認しましょう。20172月期→20202月期→直近の順に並べます。

 

-チェーン全店売上高:2兆1579億円→2兆5069億円→会社予想2兆4000億円

-日販(ローソン・ナチュラルローソン):54.0万円→53.5万円→48.8万円(2021年2月期Q3累計)

-営業利益:737億円→629億円→会社予想350億円

  端的にまとめると、グループの規模は拡大したものの、日販は横ばいないし減少、営業利益は減少したということになります。

  この背景は以下の諸点のようなコンビニ業界を取り巻く事業環境の変化があります。

- コンビニ業界の集約が進む中、店舗数が過剰になった可能性

- ドラッグストア・ディスカウントストアとの競合

- 人手不足による人件費負担が加盟店利益を圧迫

- コロナ禍に伴う商圏の変容

- コロナ禍に普及したデリバリー市場

 まさに複合的逆風にさいなまれたと言えます。一方で、仮にアフターコロナの局面になってもコンビニ業界への風向きはあまり変わらないのではというのが筆者の見立てです。アフターコロナで上記の諸問題が一掃されるとは考えにくいからです。人出がある程度回復し都心部の商圏に活気が戻る程度ではないでしょうか。

コンビニ業界、トップライン牽引型の事業モデルは抜本見直しへ

  これまでのコンビニ業界は規模の拡大とプライベートブランド(PB)の拡充で粗利益を高めてフランチャイズ加盟店を潤すトップライン牽引型の事業モデルで繁栄したと思います。しかし現在はそのトップラインを維持するのが難しい環境へと変わりました。

  したがって、コンビニ業界は事業モデルの再構築に全力で取り組まざるを得ない局面だと考えます。その方向感は

- 短期的には、スマホアプリなどを通じた集客エンジンの強化、顧客体験の改善、および店舗オペレーションの省人化を一気に進める

- 中期的には、ヘルスケア商品などの高粗利商品の拡充を進め、さらに直営型事業モデルの模索を進める

 となるでしょう。いままでの延長線上にはないモデルも視野に入れてくるかもしれません。  豊富な顧客基盤と店舗オペレーションのコストリーダーシップを握る、例えばアマゾン・ゴーに象徴される業態がいつ日本で台頭しても不思議ではありません。したがって、コンビニ業界にはスピーディーな自己変革が求められています。

三菱商事がローソンに対して次の一手を打ち出す可能性

  セブン&アイの場合、次期中期計画で具体策の方向性が示されると思います。これを筆者なりに予想すると、日本では当座は現状のモデルの延長線上で事業モデルを改良し、他方で米国ではさまざまな実験を重ねその成果を中期的に日本のオペレーション手法に還元するという方策になると思います。

  一方、ファミリーマートについては、伊藤忠が実質的に完全子会社化(出資比率94.7%)をしています。これは伊藤忠の総合商社としてのネットワークのなかでファミリーマート事業を再定義するものです。伊藤忠の比較的安定した収益基盤の中で、ファミリーマート事業については目先の利益に囚われすぎず思い切った打ち手をとっていく、そうした意思表示だと筆者は考えます。

 ではローソンの親会社である三菱商事は動くのでしょうか。

 筆者は、三菱商事がローソンへの関与をさらに高めるべく検討を行う可能性が高いと考えています。その理由は次の通りです。

- ローソンの置かれている状況はファミリーマートとほぼ同じで事業見直しの喫緊性が高いこと

- このためには三菱商事系列のPontaとの連携強化だけではなく三菱商事のネットワークを活用する必要が高いこと

- ローソン株価が現状低く、三菱商事が株を買い増す負担が低いこと。

- 三菱商事は千代田化工建設、三菱自動車などの親密企業の不振対応をひとまず完了し、新年度以降は景気回復に伴う収益回復が期待できるため、ローソンの抜本改革を推進する財務的余力が高まりそうなこと

 ただし、三菱商事単独で動くのではなく、新たなパートナーと座組みをする可能性も高いと思います。

 ということで筆者は現在三菱商事がローソンへの関与を高めるのか、それは21年度におきるのかという点に注目していますが、筆者の関心はその有無自体よりも三菱商事がどのような座組みで進めるのか、誰と連携してローソンへの関与を深めていくのかという点に向いています。ローソンの本決算のみならず、三菱商事の決算発表が大いに注目されます。