「SMだけでは永続的な成長は難しい」食品製造小売業に舵切り!=阪食 千野 和利 会長
経営に影響する5つの要因
──これからの事業展望を教えてください。
千野 長期目標に設定するのは、20年に阪食グループとして売上高2000億円、営業利益率4%(80億円)という経営数値です。達成するためには企業として新たなステージに進み、さまざまな面で成長する必要があります。「高質食品専門館」に取り組んだこれまでの6年間は主として「ビジネスモデルの確立」がテーマでした。
今期以降は出店ペースを加速させ、事業拡大を図りながら高収益構造へ移行することが大きな課題です。
──今の順調なペースで推移すれば、比較的スムーズに数値目標を達成できるように思えます。
千野 そう簡単ではありません。当社の15年度も終盤ですが、ここへ来て、経営環境や社会情勢がかなり変化してきているとあらためて痛感しています。
最も大きいのは人口動態の問題。現在、国内では少子高齢化による人口減少が進行しています。SMにとって最も重要なマーケットそのものが縮小しているのです。
国立社会保障・人口問題研究所は、日本の人口は4 0 年には1 0 年と比べ、16.2%減ると推計しています。当社がドメインとする近畿地方、2府4県の人口は約2075万人。これが16.2%減ると1739万人になる計算です。とくに出店対象とする都市部の人口は約1300万人ですが、そこでも同じ現象が起きるのです。
人口減少とともに、世帯の構成も変化しています。世帯数は増え、構成人数は少なくなっています。ライフスタイルも確実に変わってきており、今後のSMのあり方にも影響するとみています。
ほかにも、経営環境に関する変化要因は複数あります。
たとえばTPP(環太平洋パートナーシップ協定)やFTA(自由貿易協定)など貿易に関する問題。将来的に、商品調達方法が大きく変わる可能性があります。
また慢性的な人材不足。対処方法によっては、経営の成長戦略にストップをかける大きな要因になるでしょう。さらには競争激化。SM企業間だけでなく、業態を超えた戦いが激しさを増しています。そして17年4月に控える消費税増税です。
そうしたなかでグループ内にも大きな動きがありました。周知のようにイズミヤ(大阪府/四條晴也社長)がエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/鈴木篤社長:以下、H2O)グループ入りしたのです。これについては当初はまったく予想もしていませんでした。
ですから、今後の経営は、こうしたことを十分に考慮したうえでの舵取りが求められます。