「SMだけでは永続的な成長は難しい」食品製造小売業に舵切り!=阪食 千野 和利 会長
付加価値創造に挑む!
京阪神エリアを基盤に事業展開する阪食(大阪府/河村隆一社長)。食品スーパー(SM)の独自フォーマット「高質食品専門館」を原動力とし、着実に成長を続けている。同社は今後、出店を加速する方針で、さらなる事業拡大を図るという。千野和利会長にこれまでの成果や将来展望を聞いた。
新フォーマットが全体の7割
──SM「高質食品専門館」の展開を開始し6年半が経過しました。
千野 2009年7月の阪急オアシス千里中央店(大阪府豊中市)を皮切りに、新規出店や既存店改装を通じ、新フォーマットによる店舗網を拡大してきました。現在の店舗数は80店、うち「高質食品専門館」は57店で全体の7割超を占めるまでになりました。
業績も順調です。11年3月期の阪食グループの売上高は954億円、営業利益17億円でしたが、15年3月期は売上高1132億円、営業利益24億円となり、6期連続の増収増益を達成しました。営業利益率も当初の1.8%から直近は2.1%で、毎年伸長しています。16年3月期は、売上高1249億円、営業利益28億円で着地する見込みです。
──確実に事業を拡大していますが、会社経営にあたり何を意識していますか。
千野 「永続的な成長」です。本来なら「急速な成長」をめざしたいところですが、不確実で不透明な時代にあっては、よほど優位性のあるノウハウ、商材がなければ難しい。ではゆるやかであっても「永続的な成長」を実現するにはどうすればいいか。それは競争力ある経営施策を打ち出し続けることです。
そして、そのためには時代の流れや変化を敏感に感じ、対応できる経営層、従業員が不可欠です。つまり「永続的な成長」をめざす経営では人材育成が最大の課題だと認識しています。
──どのように育成しますか。
千野 そこで考え出したのがSM「高質食品専門館」です。「専門性」「ライブ感」「情報発信」をキーワードに、それらを具現化する品揃え、売場づくりをしているのが特徴のフォーマットです。実は、この3つのキーワードこそが人材育成の要になっています。
その目的は、今説明したような人材を育成することです。しかし「時代の変化を読み、対応しなさい」と言っても何をどうすればよいかわからないでしょう。
そこで3つのキーワードを設定することで各人が時代を読み、対応する力をつけられるようにしているのです。たとえば精肉部門の担当者なら、3つのキーワードの視点で品揃えや売場づくりを工夫するでしょう。日々、売場に立っていると「脂身ではなく、赤身のほうが喜ばれるかも知れない」「和牛ではなく、輸入牛を使ってコストを低減できないか」などと考えるはずです。つまり仕事を通じ、マーケティングを学ぶという仕組みになっているのです。