《特別提言》経営者の努力次第で中小食品スーパーは強くなれる!=エコス 平 富郎 会長
提言(3) 高齢者の購買意欲をくすぐる
お客さまにとって、価格は店舗を選ぶ重要な要素となる。ただ、昨年から価格競争は少し落ち着き始めたとみている。多少価格が高くても、品質がよく、値ごろ感のある商品であれば購入するという消費マインドに変わりつつある。こうした時流に合わせて、品揃えを見直していく必要がある。
これからの小売業の重要なテーマは、少子高齢化への対応だと思う。量目を少なくしたり、柔らかく食べやすい商品を充実したりするなど、とくに高齢のお客さまが欲しいものを仕入れて、工夫して販売しなければならない。
2013年度末の国民の金融資産は年度末としては過去最高の1630兆円に上る。12年度末に比べて金額ベースでは50兆円以上も増えていることからも、消費者はお金を持っていることがわかる。なかでも金融資産全体の6割を有する、60歳以上のシニア世代を取り込むような提案が求められる。高齢者の関心をつかみ、購買意欲をくすぐるキーワードは健康だ。健康維持に貢献する商品を店舗でしっかりアピールできれば、多少高くても売れるようになると確信している。当社も、生鮮食品を強化した最新フォーマット「TAIRAYA」において、中高年を主要ターゲットに健康をテーマとするMDの構築に取り組んでいるところだ。
提言(4) 成長のヒントはすべて店舗にある
私は毎月1回、セルコチェーンに加盟する中小SMの経営者と話す機会を設けている。中小SMは情報が少ないため、セルコチェーンの勉強会は数多くの経営者にとって有益なものになっている。
最近は、近くに競合店ができることがわかり、焦って悩んでしまう経営者が多い。そういう場合には、しっかり相手を研究して戦えばいいとアドバイスをしている。競争に打ち勝つためには勉強をしなくてはならない。しかし、ハングリーさを持ち合わせておらず、勉強しない経営者が多くなったと感じている。
競争こそが企業と経営者を鍛え、強くする。厳しい競争を勝ち抜くために重要となるのが知恵を絞ることだ。そのためには知識の習得に加えて、経験も必要だ。両方をうまく掛け合わせて、知恵としてアウトプットできなくてはならない。
中小SMの場合、社長が先頭を切って勉強し、社員を引っ張っていく必要がある。経営者はまず、基本としてMDや価格政策を地道に勉強しなくてはならない。競合店に対抗するためにはどのような売場をつくり、どんな商品を訴求すればいいのか、問題もその答えも店舗に行けばすべて見つかるはずだ。わからないことがあれば売場でメモをとって、従業員やお客さまに聞けばいい。
少ない店舗数でも地域密着を強く打ち出し、お客さまとの距離を縮めてコミュニケーションを深めれば、必要としている商品が徐々にわかってくる。とくに高齢のお客さまはコミュニケーションに飢えており、地域の食文化や行事など、話題にできることはたくさんある。聞き出したニーズを、地域に根差した独自商品やサービスとして提案すれば、お客さまの支持獲得につなげることができる。
中小が地域密着の度合いを深めることによって差別化できることはいくつもある。地域から強く支持されるSMは、大手との競争で簡単に負けてしまうことはないだろう。
たとえ失敗したとしても、得られるものは大きい。社長が成功と失敗を繰り返せば、経営幹部も一緒に成長するからだ。逆に、幹部に仕事を任せ、失敗すると批判するから何もしなくなってしまう。だから、中小SMの社長はまず自分が勉強し、自分の責任で決断をしなくてはならない。人材育成については、規模が大きくなってから取り組んだとしても遅くはないと考えている。
経営者が真っ向から向き合い競争すれば、恐れることはなにもないはずだ。むしろ危惧すべきは、競合する相手の規模だけを見て、やる気をなくしてしまう経営者が少なくないことである。