マーケット縮小、競争激化、変化に対応できる企業が生き残る=ヨークベニマル 大髙 善興 社長

構成:大木戸 歩
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「大きくて強い者ではなく、変化に対応できた者が生き残った」──ヨークベニマル(福島県)の大髙善興(おおたか・ぜんこう)社長は、小売業界の動向をダーウィンの進化論になぞらえる。地盤とする福島県の食品市場規模は2050年には半分程度に縮む。素材を求めて来店していたお客は、料理にかかる手間暇を惜しむようになった。消費税増税や、水道光熱費の上昇が消費マインドに与える影響は小さくない。大髙社長はこうした消費者や環境の変化に、どう対応するのか。

2015年2月期は新規出店を抑えて改装に注力

──4月1日から消費税率が8%に上がりました。増税前後の状況はいかがでしたか。

ヨークベニマル代表取締役社長 大髙 善興
ヨークベニマル代表取締役社長 大髙善興 おおたか・ぜんこう 1940年3月1日福島県生まれ。1958年にヨークベニマルの前身である紅丸商店入社、63年に常務取締役に就任。2000年から現職。74歳。

大髙 3月は既存店売上高が対前期比5.8%増加しました。加工食品の中でも調味料や油、砂糖のような買いだめされやすいカテゴリーが伸びました。そのぶん4月の第1週は前期に比べて売上が落ち込みました。それでも4月の第4週目までで見ると、既存店売上高は同2~3%減で推移しています。

 前年実績を下回った主な要因は、加工食品部門に影響が出ているからです。現在は総菜と青果部門は前年並み、精肉部門は同3%程度増、鮮魚部門は同3~4%程度減少している状況です。総菜を含めた生鮮4部門の売上が回復していれば、時間とともに売上は戻ると考えています。

 ただ、消費税増税に加えて水道光熱費も上がっていますので、消費者がこの先、どのような購買行動をとるかは注視していく必要があります。所得が増えるわけではなく、一定の所得の中で生活するわけですから、生活コストが上がる今後は、従来以上に価格に対して敏感に反応するのは間違いないでしょう。

──安倍晋三政権の方針を受けて、大手企業を中心に賃上げの動きが広がっています。

大髙 大手企業は2.5%くらい賃上げを実施しましたね。政府の方針に加えて、各社が賃上げに踏み切る背景には、雇用が追い付かない状況があります。これには地域によって大きな差がありますが、パート社員を含めて採用難が続いています。

 今は商売自体の競争だけではなくて、採用面での競争が激しくなっています。企業は福利厚生を含めて、人材を確保するための対策がいちだんと求められるようになります。その競争を勝ち抜くためには、コスト負担の増加に耐えられるだけの生産性を上げる必要があります。

 現在の各社の賃上げの動きをみていると、必ずしも収益性改善を伴うものばかりではありません。国から「賃金を3%上げなさい」と言われて対応した企業と、収益性を改善したうえで賃上げをした企業との間に、この先の数ヵ月で優勝劣敗が見えてくるでしょう。

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