高質と効率を同時に実現、経営改革を加速する=三越伊勢丹フードサービス 内田 貴之 社長

聞き手:下田 健司
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──もう一つのカイゼンは、SMにどう関わってきますか。

内田 シンプルに表現すると、経営の役割は改革、現場の役割がカイゼンです。経営は、出店やシステム導入など、効果を出すための投資判断を含めて意思決定します。カイゼンは、現場のチーフからパート社員まで全員が現場の課題を一つひとつ解決していき、環境を改善することです。もちろん経営は、この改善の仕組みをつくる役割を担います。

 店舗のチーフがボトルネック(仕事の進行の妨げとなるもの)を探す。分析して、チーム全員でボトルネックを解消する。すると、次のボトルネックがあるので、それをまたカイゼンする。すると、また次のボトルネックがあるので、それを解消して定着させていく。このようにして、成果を積み上げていくのがカイゼンであり、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことが基本です。

──ジャスト・イン・タイムもカイゼンも、考え方の転換が必要になりそうですね。

内田 当社には、基本的な考え方のベースはあります。鮮度のよい商品を高回転で、つねに質の高い状態で提供しようというビジネスですから、ジャスト・イン・タイムのコンセプトは不可欠です。また、カイゼンは、人を大事にする風土がないと、なかなかうまくいきません。会社に対する帰属意識、会社やチームに対して貢献しようという風土です。

 もともとそういう風土が三越伊勢丹グループにはあります。製造業のQCサークル的なものを「職場の約束」と称して、職場ごとにチームをつくり、テーマを設定してカイゼン活動をやっています。カイゼンのコンセプトと非常によく合うのです。自動車製造業は小売業とはまったく異なる業種ですが、経営改革・経営改善のコンセプトや管理技術は、小売業に応用できる部分も多いと思っています。

基本の徹底と夕方の攻めの商売

──社長に就任して、「クイーンズ伊勢丹」にどういう印象を持ちましたか。

内田 入社したあと、店を回って感じたのは、夕方の賑わいが少ないということです。クイーンズ伊勢丹というブランド力があるのだから、自信をもって攻めてもいいのに、消極的になっている。欠品も目立ちましたし、前出し陳列もできていませんでした。お客さまに対して、積極的な声がけもあまり見られません。どういうお客さまに何を売ればいいのか、焦点が定まっていない印象も受けました。

──どんなところから、手を打とうとされているのですか。

内田 まず、基本の徹底です。1つはあいさつです。百貨店の名前のついたSMですから、接客にはほかのSM以上に期待されているところがあります。ですから、接客がない、あいさつがないというのは非常にマイナスになります。もう1つは、売場のクレンリネスと前出し陳列の徹底です。従業員全員で商品管理と売場管理をするために、まず鮮度管理も兼ねて、前出し陳列を徹底しようというメッセージを出しました。「接客」と「前出し陳列とクレンリネス」に「品質管理」を加えた3つを基本の徹底の項目にしました。

 それから、夕方のピーク時における攻めの商売です。まず52週MDの商品計画があって、仕入計画、展開計画、販売計画に落とし込むという流れをつくりました。それに、人員計画や要員計画をリンクさせる。たとえば「惣菜部門」では、売上予算が100万円の場合、ロスを考えると110万円くらい製造できる原料が必要になります。人員も110万円の製造が可能な人員体制が必要です。開店前、ピーク時、ピーク後にそれぞれ何パックつくるという計画も必要になります。「(計画は)頭の中に入っている」と言う従業員は多いのですが、そうではなくて、きちんとした計画と管理ができる仕組みにしていきたいと考えています。

 さらに言うと、たとえば1ケース品出しするのに○分かかる、今日は○ケース入ってくるからトータルで○時間かかるという計画が本当は欲しい。

 製造業では当たり前のようにやっていますが、当社でそれができるようになるのは、少し先になるでしょう。加工は加工で、接客は接客で時間がどれくらいかかるかを決めて、人を手当てする。まずは計画をしっかりつくって、実際にやってみて、ズレが生じたときに調整する。これが攻めの商売の基本だと思っています。

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