イオンベーカリーも導入したフードロス削減サービス「TABETE」の次なる戦略
「TABETE」の導入が新規顧客につながる
「TABETE」は、今後もユーザー数、店舗数を増やしていく方針だが、とくに店舗数の拡大が目下の課題だという。「現状、ユーザー数に対して店舗数が圧倒的に足りていない。登録ユーザーの生活圏にできるだけ早く店舗を増やしていかなければならない」(篠田氏)。「TABETE」では、商品が1つ売れるたびに手数料として店舗から150円をコークッキングが受け取る仕組みとなっている。そのため、店舗数の拡大が同社の収益増に直結している。
また、現状では出品されているのがパンや菓子など、女性に好まれる傾向のある商品が多い。ユーザー層を男性にも拡大するため、ボリュームのある弁当や丼物を取り扱う店舗を増やすなど、さまざまなジャンルの店舗へのアプローチも必要だ。
店舗数拡大には、「TABETE」を導入するメリットを店舗に理解してもらうことが不可欠だと篠田氏は話す。2~3年前は、「TABETE」に値下げして出品することで、ブランドが下がるから出品したくないという店舗も多かったが、「TABETE」導入によってフードロス削減への貢献をアピールできることをメリットとして認識する店舗が増えたという。最近では山崎製パン(東京都/飯島延浩社長)やイオンベーカリー(千葉県/長谷川康之社長)など大手企業の導入事例もある。
「TABETE」の導入が新規顧客の創造につながることもメリットの1つだ。「TABETE」を使って来店したユーザーの約35%が、通常の買物でもその店舗を利用するという。
SMへの展開も視野に
そのほか、店舗数拡大については、スーパーマーケット(SM)への展開も視野に入れる。「『TABETE』のモデルとなった『Too good to go』では、飲食店や中食の店舗だけでなくSMの導入も進んでいる。その日に余った野菜や果物、肉類などの生鮮食品を詰め合わせた『Magic Box』(福袋のようなもの)を購入できる。同じような仕組みを『TABETE』でも導入したい」(篠田氏)
店舗数やユーザー数を拡大するための施策として、「TABETE」は自治体との連携にも力を入れている。ごみの焼却費削減の方法として、フードロス削減に力を入れている自治体も多く、自治体側から「TABETE」に声がかかることが多いとのことだ。「自治体だけで一般市民への具体的アクションにつなげることは難しく、民間企業と連携して具体的な施策を打ちたいという機運は高まっている」(篠田氏)。地域の広報紙で「TABETE」を紹介してもらったり、自治体が以前から実施している食品ロス削減の取り組みに参加している店舗に「TABETE」を導入してもらったりしており、現在16の自治体と提携している。
コークッキングは「TABETE」以外にも、商業施設や駅ナカで閉店後に余った商品を買い取って別のテナントの従業員に販売する「TABETE レスキューデリ」や、規格外の野菜などを生産者が直接ユーザーに配送する「TABETE レスキュー掲示板」など、さまざまなサービスでフードロス削減に取り組んでいる。同社は今後も「TABETE」を軸にフードロス削減に取り組みつつ、蓄積したデータやノウハウを活用し、フードロス削減のためのコンサルティングなど新たなビジネスモデルの構築も視野に入れて、事業拡大を図っていく考えだ。