メニュー

アフターコロナの小売像その7 ニトリ、コスモス……勝ち組がさらなる勝ち組に?

アフターコロナの世界で、売上高を伸ばす企業はどこか。アフターコロナにやってくる“新日常”は、政府が求める「新しい生活様式」の延長線上にあるとされる。この世界では、いま売上高を伸ばしている企業が、ある程度の売上の剥落があっても今後伸びていくというのが大方の見方だ。小売・外食の注目企業は、どのようなアフターコロナ戦略を描いているのだろうか――。

今や全都道府県に出店し、台湾、米国など海外進出を果たした ニトリ(東京・新宿の店舗)

株価好調のニトリ、増収増益記録を伸ばせるか

 流通業界における、アフターコロナの“勝ち組”プレイヤーはどの企業になるのだろうか。

 苦戦を強いられているのが、都市部やオフィス街への出店が多いコンビニだ。セブン-イレブン・ジャパン(東京都)を始め、コンビニ大手各社の4~5月の既存店売上高は前年同月実績を下回っている。一方で、巣篭もり消費の活発化を背景に、食品スーパーやホームセンターなどの業態は売上高を大きく伸ばしている。

 好調企業の中でも、とくに注目を集めているのが、ホームファニシング最大手のニトリホールディングス(北海道、以下ニトリ )だ。「家具インテリアは“不要不急”の商品であるため、売上高も大打撃を受けている」と思われがちだが、5月の既存店売上高はタイ前年同月比0.6%増と堅調で、客数は同6.7%増と大きな伸びを示している。

 こうした状況を反映してか、ニトリの株価は1万6440円をつけていた5月1日から上昇基調が続いており、6月10日の終値は1万9320円と、1カ月と少しで17.5%も上昇。年初来の高値を記録している。

 ちなみにニトリは、20年2月期決算で33期連続の増収増益を達成している。インバウンド(訪日外国人)にも依存しない安定した需要、そしてコロナ禍でも集客力の衰えない店舗・商品力が投資家の安心感を誘っているとみられている。ニトリは21年2月期も増収増益を予想するなど強気の見通しを立ており、増収増益記録を34に伸ばす計画だ。

 ニトリ会長である似鳥昭雄氏は、経済の先行き予測の的中率が高いことでも有名だ。その似鳥氏によれば「(コロナ後は)建築費が低下し、土地の価格も場所によって1~3割下落する。またEC化率は欧米に近づき2ケタになる」とのことで、物流拠点や出店用地を取得し、世界で60店を出店も計画するなど攻勢をかける。通販事業も20年2月期は443億円と対前期比14.4%増となっており、売上高全体の約6.8%を占める規模に成長している。

“コスモス旋風”が関東に

 アフターコロナで勢いづいている業態といえば、ドラッグストアである。

 数あるプレイヤーの中で、とくに目が話せないのが、コスモス薬品(福岡県)の動向だ。同社はM&A(合併・買収)もせず、肥沃なマーケットである関東への出店もほとんどない状態で、売上高を伸ばし続け、ツルハホールディングス(北海道)、ウエルシアホールディングス(東京都)に次ぐポジションまで登りつめた強者だ(注 コスモス薬品は20年6月期売上高6585億円を計画、20年3月期売上高6177億円のサンドラッグを上回ることは確実だ)。

 売上高構成比の半分以上を占める豊富な食品の品揃えを強みに、4月の既存店売上高は対前年同月比17・5%増となっており、5月も同15.2%増と好調をキープしている。

 そんなコスモス薬品だが、21年に予定されているマツモトキヨシホールディングス(千葉県)とココカラファイン(神奈川県)の経営統合が実現すれば、業界4位に転落するとみられている。その巻き返し策として注目されているのが、関東の攻略だ。

 コスモス薬品は19年から、「広尾店」(渋谷区)のような“お試し店舗”の小型店を都内に出店している。20年に入ってからは、商店街立地である「祖師谷店」(世田谷区)や、住宅立地の「上野毛店」(同)となどさまざまな立地で店舗展開をスタートした。

 そして、ついに同社が主戦場とする郊外立地にも本格出店を開始。茨城県内に、「堀町」(水戸市)、「ゆめみ野店」(取手市)、「龍ヶ崎店」(龍ヶ崎市)の3店舗を出店したほか、埼玉県でも「せんげん台店」(越谷市)をオープンする予定だ。

 圧倒的な食品の安さを武器とするコスモス薬品の関東進出は、近隣の食品スーパーやコンビニにも影響を与えるのは間違いない。競合する企業は動向を注視せざるを得ないだろう。

 アフターコロナの新日常においても、以前からの注目企業は、業績を伸ばし続ける可能性が高そうだ。勝ち組プレイヤーが新たな一手を繰り出す前に、競合他社は対応していく必要がありそうだ。