小売・流通業界のコンサル事情と失敗しないためのコンサルの選び方
今回は、意外と知らない、流通業界のコンサルタント事情について書いてみたいと思う。一部暴露のような部分もあるが、自社(小売業)で成果を挙げるためにコンサルタントをいかに有効活用するかという視点で読んでもらえるとありがたい。
実務経験のないコンサルたち
先日、私は、ある大手アパレルに呼ばれ社内向けの講演を行った。その際、私は会場で「コンサル批判」を浴びせかけられた。
それは以下のようなものだった。
「私は数多くのコンサルタントと付き合ってきたが、彼らのほとんどは実務経験が無く、店頭に立ったことも無い。いわば、ビジネスについては全くの素人で、屁理屈や横文字ばかりをならべ、やっていることはPDCAの名を借りた行動管理だけで最悪だった」
こんな感想を持っても何ら不思議ではない。
私はコンサルタントファームのパートナーとして、新入社員の採用に関わっているが、コンサルを志望する理由の1つとして「色々なインダストリーが経験できる」を挙げる人が多い。まるで、1つのことをしっかりやりきることが自分の可能性を狭めるとでも思っているようだ。私はそういうときに、こんな質問を返すようにしている。「それでは、お客さまが、コンサルタントとしてあなたに高額なフィーを払う理由はどこにあるのですか?」
色々なことが経験できるといえば聞こえは良いが、言い方を変えれば、卓越した専門性がないということだ。旧帝国大学を卒業した人や、MBA (経営管理学修士)などの資格も、もはや大手企業に行けば持っている人も多く、地頭の良さもコンサルタントだけが別格だなどということはない。
その道何十年という猛者達が、いくら考えても思いつかないようなアイデア、戦略を作り上げなければこの仕事は成立しえない。実際、小売・流通業界はデジタルディスラプションの影響により、欧米では既に多くの小売業が廃業に追い込まれ、第1回で紹介した「7つの変化」も既に現実のものになりつつある。こうした変化の裏側にある構造や「次の世界」が読めなければ価値を提供できないのはいうまでもない。
今、コンサルティング業界は拡大期にあり、多くのファームが成長を遂げている。内部では、「猫の手も借りたい」ほど人が不足しており、実際、入社のハードルも昔に比べると低くなり、インダストリーとしての拡大とは真逆に、質はますます低下しているというのが私の感覚だ。
しかし、ファームの中には、大前研一氏などが輝かりし日のイメージを前面にだし、「我こそは知の伝道者だ」、というイメージを今でも学生にすり込んでいるため、入社前と入社後の仕事のギャップに落胆する若者は多いと聞く。しかし、考えてみれば、どこかのファームに入社すれば、いきなり百戦錬磨の経営者に「社長、それは違いますよ」とアドバイスができるほど変われるはずがない。蛙の子はいつまでたっても蛙だから、本当にそういうことがしたければ、それなりの実力をつけなければならないのは言うまでもないのに、「就職」が、あたかも「大学入試」と同じような感覚で捉えられ「入ってしまえば、東大卒」という具合に、コンサルティングで戦略部門に入れば経営者にアドバイスができるようになると勘違いしているわけだ。この認識ギャップは、採用する側とされる側の双方に問題があると思う。