ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは
あの名門ワールドが11月28日、三菱商事ファッションを買収し完全子会社化することを発表した。株式譲渡実行日は来年2月中の予定。
私は、OEMはもはやビジネスとしては破綻しており、海外のファンドか日本のアパレルを買収し、「バリューチェーンの川上、川中、川下が統合する『垂直統合』が起こる」と再三本連載で言い続けてきたが、実際にその通りになったかたちだ。商社とアパレルの合併は、オンワードホールディングスによるサンマリノの持分法適用会社化・資本業務提携がすでに起こっており、西と東の雄(ワールドとオンワード)が、商社機能を内在化したことになる。また伊藤忠商事を除く、三井物産、三菱商事、住友商事という大手総合商社が実質的にOEMから撤退したことになり、日本を代表するアパレルと商社は、ユニクロを含め、すべて「直貿」化したことになった。この流れは止まらないだろうし、いっそう加速するだろう。
進む!アパレルの垂直統合と2つの懸念点
いまから2年前の2022年8月、三菱商事から私の元に連絡があった。「三菱商事ファッションをどうすべきか」というテーマについて、所見をヒアリングされたのだ。ワールドにはワールドプロダクションパートナーズ(WP2)という商社機能をもった子会社が存在し、私の先輩含め商社経験者が多数在籍していたが、この垂直統合はそれほどうまくいったようには見えなかった。
理由はシンプルで、「ワールド専門のOEMではスケールメリットが効きにくい」こと。そして、こちらが最もクリティカルな影響であるが、「OEM機能が川下の配下でうまくコントロールできないこと」の2点だ。
OEM機能が川下配下でコントロールできない大きな理由は、川下は「欲しいときに」「欲しい商品を」「欲しい量だけ」求めるからだ。これに対し、川上は効率を追求して、同じ商品を可能な限り大量に、段取り替え無しに作り続けたいと考えている。両者は「真反対」の方向を向いているのである。
今回、三菱商事ファッションの既存得意先があるので、スケールメリットの問題は解消されたものと思われる。だが懸念事項もある。それら三菱商事ファッションの得意先の多くはワールドの競争相手だ、という点だ。私がアパレル側の立場なら、自社の競合になるワールド(グループ)に発注を入れにくいだろうと思う。そうなると売上は大きく下がる可能性だってあるのではないだろうか。
また、川下の配下で川上はコントロールすることは依然極めて難しい。真逆のKPIを追いかける、いわゆるコンカレント・エンジニアリングに手が届くには、準備期間などを含めると、時間的に短い。したがって、とくに短期的には私はこの垂直統合にはやや懐疑的である。もしすんなりうまくゆくようなら、はるか昔にWP2が成功を成功を収めていたはずだからだ。しかし、当然、大いに期待もしている。
実際、他社で過去に成功事例があるので解説したい。
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