実録!働かせ方改革(7) 残業是正や女性管理職増は実は小手先 働きやすい職場の作り方!
管理職のあり方を見直し、組織のヒエラルキーを壊す!
今回は社員が納得感を高め、働くことができる職場をつくるうえでの盲点をあぶりだしている事例だと思う。私が導いた教訓を述べたい。
これをしたからよかった ①
役員や管理職のあり方を見直した
働き方改革では、残業の削減や女性の管理職を増やすことなどに取り組むケースが多い。それらは大切な試みではあるが、会社のあり方を構造的に変えることにはつながらない。ある意味で小手先の応急処置なのだ。メスを入れるべきところは、役員や管理職のあり方なのだと私は思う。たとえば、一般職から管理職に昇格するときに厳格な審査があるだろうか。あるいは、管理職から役員に昇格するとき、多くの社員が納得するような基準やプロセスがあるだろうか。おそらく、多くの職場で「NO」だろう。
会社の中枢である管理職や役員の選抜基準が曖昧ということは、彼ら彼女らのマネジメントスキルも違えば、仕事の仕方、仕事のさせ方も違うことを意味する。それゆえに残業時間の削減が進まない、あるいは単に残業時間は減ったものの、労働生産性を上げることは不十分な企業がほとんどなのではないだろうか。それでは結局、問題の本質には到達できずじまいだ。従業員のモチベーションが高く、働きやすい職場をつくることを通じて、企業の活性化、ひいては好業績につなげていくことが働き方改革の本質なのだが、残念ながらこの点についてはあまり取り上げられることがないため、盲点となっている(企業側が対処療法のみを求めているという事情も影響しているだろう)。
この会社は、「情報の格差」を撲滅することが課題解決の方法と考え、それを是正するためには、役員や管理職のあり方を変えることだと認識して、改革を積み重ねた。評価すべき事例だと思う。
これをしたからよかった ②
組織をフラットにした
IT機器を活用し、情報を共有するという試みはこの20数年間で多くの企業が行っている。問題はそこから先に踏み込むことができているかどうか、だ。残念ながら、私が知る限りではそのような企業は少ない。そのなかで、この会社は、役員や管理職の数を減らそうとしてきた。誰もが既得権を奪われることに抵抗したくなるものだが、それでも挑戦するのだから、評価するべきだろう。
組織をフラット型にしていかなければ、情報の格差はどうしても生まれやすい。この差があると、上司が部下に対して力が強くなり、さまざまな問題が生じる可能性が高くなる。職場の空気も悪くなり、社員の意識が低くなりがちだ。このような状態では、生産性が上がらず残業時間の削減もなかなか進まないだろう。情報の格差をなくすために、組織のヒエラルキー階層をできるだけ減らせるかが大切になってくる。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
連載「私は見た…気がつかないうちに部下を潰した上司たち」はこちら