メニュー

ランドセルが8800円!? ワークマン、ヒット商品連発の裏側に迫る!

2024年6月、ランドセル市場に「ESスチューデントデイパック」を投入したワークマン(群馬県/小濱英之社長)。ワークウェアを主力とする同社がランドセル市場に新規参入したこともさることながら、「税込8800円」というランドセルの常識を覆す価格帯も話題を呼んだ。こうしたワークマンのユニークな商品はいかにして生まれるのか。同社製品開発第3部マネージャーの林邦彦氏に聞いた。

同社がランドセル市場に投入した「ESスチューデントデイパック」

 ワークウェアから、アウトドア、スポーツ、デイリーウェア、さらには雑貨へと進出してきたワークマン。雑貨や工具の製品開発を担う製品開発第3部マネージャーの林邦彦氏は、「扱う商品の幅が広がるにつれて、製品開発部も拡大してきた」と語る。

 現在、同社の製品開発部は、主軸である作業服を扱う1部のほか、レディース全般、シューズ、レインウェアなどを扱う全6部に細分化され、製品開発部と生産管理部合わせておよそ50人体制となっている。

 かつては「一匹オオカミの集まりのようだった」(林氏)という同社の製品開発部隊だが、近年は各部のトップが連携を強めながら商品開発に取り組んでいるという。ワークテイストの作業服から、「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」と、幅広い層に訴求する店舗を展開するにつれ、商品開発にも変化が求められるようになったのだ。

製品開発第3部マネージャーの林邦彦氏

 同社の商品開発は、どのように進行しているのだろうか。林氏は、「開発のネタ探しという感覚で、まずは市場調査から始める」という。「たとえばランドセル市場を見ると、少子化とはいえ年間100万人は子どもが誕生する。つまり毎年100万人の顧客がいるということになる。シェアとしては十分と踏んだ」(林氏)という。とはいえ、主要な鞄メーカーに加え、ニトリ(北海道)やGMSなどもプライベートブランド(PB)を販売している。

 ワークマンは新規参入にあたって、価格優位性を強みとした商品設計をした。林氏は「各社が展開している商品の品質や価格を確認した上で、『我々が作るといくらになるだろうか』と考えた。当社が培ってきたノウハウを活かせば、丈夫で便利なランドセルが作れる。『ワークマンがランドセル!?』という意外性もあり、しかも税込8800円という価格であれば、十分なインパクトを打ち出せると判断した」と説明する。

インフルエンサーを起用し、商品を「バズ」らせる

 フランチャイズで店舗展開するワークマン。ワークウェアがメインとなるスペースで、それ以外の商品を販売することに難しさを感じないのだろうか。林氏は「ヒット商品を生み出すためにはどんどん商品開発をして、タイミングを見計らって売場に出していかなければならない。そのためには商品の“引き出し”を充実させる必要がある」と強調する。売場の商品が入れ替わるタイミングで「売れる」商品を置けるよう、商品開発部は常に「引き出し」を持っているのだ。

 同社の社長である小濱英之氏も、かつては商品開発担当者だった。その影響もあってか、同社は価格優位性や品質の担保といった前提さえ押さえていれば、チャレンジを歓迎する企業風土だ。「作り手によってどんな商品をつくりたいかはさまざまだ。それが大枠から外れていなければ、だいたい製品化される」(林氏)という。だからこそ、自由な発想でユニークな商品が次々と生み出すことができるのだろう。林氏は、「ワガママの集まりです!」と笑う。

 開発した商品が「当たった」という感覚は、ある程度データに基づく判断基準は存在しているものの、担当者によって異なるようだ。林氏の場合は「たとえばSNSでバズり、欠品が続くような商品は、データを見るまでもなく大当たり。一方で、バズらなくても発売前に見込んでいた販売数から上振れしたときは、やはり当たったと感じる」という。

 インフルエンサーを介して商品を盛り上げる手法も同社ならではだ。そのきっかけは、「綿カブリヤッケ」がブロガー・YouTuberのサリー氏の投稿を受けて完売したことを皮切りに、「イージス防水防寒スーツ」や妊婦も滑りにくい「厨房靴」などがSNSでバズり、商品が飛ぶように売れる現象が相次いだことだ。こうした現象を受けて同社は、2019年頃からアンバサダーマーケティングと呼ばれる手法を本格化させており、サリー氏は現在、同社の社外取締役に就任している。

「イージス防水防寒スーツ」
妊婦も滑りにくい「厨房靴」

 今回発売されたランドセルも、新製品発表会でお披露目するやいなや、YouTubeでバズりが生まれ、一般客やメディアからの問い合わせが相次いだという。初回はオンライン販売中心のスモールスタートだが、現在で在庫消化率が90%と好調な滑り出しを見せている。

 今後も多方面への商品展開に期待が高まるワークマンだが、短期・少量生産のクイック・レスポンス製品(QR製品)からも目が離せない。QR製品は、239月に銀座にオープンした新業態の「Workman Colors イグジットメルサ銀座店」(東京都中央区)のほか、全国の「#ワークマン女子」の店舗で展開している。トレンドを押さえた商品がターゲットに刺さり、好調に推移しているという。「どの店舗でも買える」という商品展開を特徴としていた同社だが、今後は「ここでしか買えない」商品展開も増やしていきたい考えだ。