A.T.カーニー福田稔氏が見通す、GMS改革、セレクトショップ、ECの未来
リベンジ商品も一巡し、見通せない状況が続くアパレル業界。前編では、A.T. カーニー(東京都/関灘茂日本代表)の福田稔シニアパートナーにアパレル小売のトレンドと今後の見通しについて語ってもらった。後編では、業態や販売形態など、さらに具体的な領域に落とし込んで、ファッションビジネスの未来について福田氏が解説する。※取材は2023年11月に実施
グローバルSPAの店舗数は減少する!?
──GMS(総合スーパー)の衣料品改革が成功する可能性はあるのでしょうか。
福田 GMSの衣料品の市場シェアは低下し続けているため、イトーヨーカ堂のように直営の衣料品から撤退する流れは今後も継続すると思います。供給過多とはいえ、消費者から見ると、低価格な衣料品のニーズは高いので、イオンのように直接貿易や生産管理によるコスト削減、ブランド力などの企業努力があれば、残れるかもしれません。
──ラグジュアリーでも低価格でもないセレクトショップはどうなっていくのでしょうか。
福田 マーケット全体が二極化しているので、中間は淘汰されると考えています。ハウスブランドとして消費者から支持されるブランド力や商品を持つショップしか残れないと思います。一方で、事業継承という問題もあります。ファンド傘下に入るセレクトショップが出てくる可能性もあるでしょう。
──アパレルのEC化はさらに進みますか。
福田 足元ではEC化率が30%を超えるアパレル企業は増えており、47%~50%ともいわれるEC化率の上限も見えているはずなので、伸びは緩くなっていくのではないでしょうか。ただ、OMO(オンラインとオフラインの融合)で面白い顧客体験を提供する革新的な形態や企業が登場すると、そうした流れが変わってくる可能性もあります。
──その際のリアル店舗の位置づけはどうなるのでしょうか。
福田 ブランドの立ち位置によって変わりますが、グローバルSPA(製造小売業)の低価格の領域は、基本的にスペインのZARA型が一つの標準形になっていくと思います。ZARAは店舗数を減らして大きな旗艦店に集約。その旗艦店に地域での物流のハブ(中核)機能を持たせて各店に配送するかたちで、全体的に効率を高めています。今後、グローバルSPAはその方向に進むのではないでしょうか。
──出店以外で成長しなければならないということですか。
福田 そうですね。サステビリティの観点では、CO2を減らしながらトップライン(売上高)を伸ばしていくことが、リアル店舗に頼っているとできなくなるはずです。先進国では多くの店舗を展開できなくなってくるでしょう。
サステナビリティ基準は上場企業では統一的なルールが設けられ、ハードルになります。EUではCSRD(企業サステナビリティ報告指令)が制度化され、サステナビリティ情報の開示が2024年度から段階的に適用されます。国際会計基準(IFRS)財団の傘下で活動する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)も基準を作成しており、上場企業であれば国を問わず守らなければならなくなれば、ゲームのルールが大きく変わってくると思います。