日本人が大好きな衣料品セール 安く買うのが難しくなる理由とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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ポイントやクーポンを含めると 
実は1年中セールが行われていた

CarmenMurillo/istock
CarmenMurillo/istock

 企業が、企画段階でつけた正規価格で商品を販売する期間は短い。例えば秋冬商品を例に8月と9月だとしよう(実際は、この時期は企業ごとにセール参戦するしないが異なる)。この2ヶ月間は新商品だが、何か「お得感」がなければ消費者は買わないため、「ポイント2倍」とか「1000円引きクーポン」などを出して、正規上代を維持したまま値引きをする手法が蔓延している。

 この2つは販管費の販促費に計上され、売上が落ちることがないため、企業は管理会計上こうして売れた商品を正規価格で売れた商品として組み込んでいる。しかし消費者からみれば、結局ディスカウントと同じだ。結果的に企業がプロパー価格で販売している期間はほとんどなく、一年中ディスカウントをしていると考えて良い。

 例えば、売れ残り商品のライフサイクルを見ていくと、まずは店内セールで30%40%程度の値引きをする。それでも残ったものは、アウトレットにいくのだが、最近のアウトレットでは、キチンと残った商品が出るわけでなく、シーズン遅れのものか、アウトレット専用品をつくって規定の利益をとって販売しているケースもある。後者は、過去幾度かメディアなどから批判され、最近ではアウトレット専用品は「アウトレット専用品」というかたちで明示されるようになった。

 それでも残った商品はファミリーセールで売り切るか、福袋などにいれて年末に売り切ってしまい、ここでも残った商品は、通称バッタ屋に渡してその生命を終えることになる。このバッタ屋は全国に販売店を持っていたり、ウェブで売ったりと決まった形式はなく、バッタ屋ごとに売り切る仕掛けは変わってくる。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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