沈まぬアパレルその6 逆風に立ち向かう! カジュアル衣料チェーンの生き残り策
AIがアパレルを救う!?
アパレル企業の多くはこれまで、「経験と勘」に依存した経営を是としてきた。需要予測、在庫管理など、アパレル経営にとって重要な局面における判断が経験則、ときには勘頼みで行われてきた。
これにより、少なくない企業が過剰生産、そして過剰在庫となり、増えた在庫をバーゲンで販売。その結果、大赤字に陥るというケースが半ば常態化してきた。しかし最近は、AIの技術進歩によって、需要予測や在庫管理を機械的・システム的に実行できるようになってきている。
ただ、ストライプの石川社長は、AI活用による在庫適正化は「消えそうな線香花火のようなもの」と見ており、AIバブルは長続きしないと言い切る。しかしそれでもアパレル企業が従来の構造から抜け出し、新たなビジネスモデル構築に向けて一歩踏み出した意義は大きい。
一方のアダストリアは、「店頭起点の小売型SPA」(SPA:製造小売業)という方針を15年から掲げており、モノづくりから販売まで一体化させる垂直統合型のビジネスモデルに変革すべく改革に取り組んでいる。前期からは、主力ブランドにおいて「適時、適量、適価」の徹底による値引き販売の抑制を推進しており、これによって20年2月期の上期業績では粗利益が前年同期と比べて2.3ポイントも改善している。
人口減少に伴う市場縮小やファストファッションの台頭などを背景に、従前のような大型ブランドを開発・育成するハードルは高い。こうした仕組みの見直しによる収益改善は不可欠となっている。
在庫コントロール、値引き販売の抑制などでねん出した原資を、EC事業拡大や海外展開に振り向けているのも両社の特徴だ。アダストリアの20年2月期上期における国内EC売上高は、全体の19.4%を占めるまで成長しており、新たな収益柱として着実に育っている。ストライプも19年1月期のEC化率は10%に到達しているという。また、ストライプはファッションレンタル「メチャカリ」が黒字化を達成したほか、ECプラットフォームを提供する「ストライプデパートメント」も取り扱いブランドが1000を超えるなど、アパレル販売以外の分野への投資が収穫期を迎えつつある。
事業構造の変革にカジを切ることで、逆風下でも健闘を続けるアダストリアとストライプ。次はどんな新しいサービス、分野、ビジネスに踏み出していくのか――。(次回へ続く)