日本人の生活を服で変えるも「選択肢」を奪った!?ユニクロの功罪とは
今であればAIブームに欠かせない半導体の需要増品から、日本では半導体銘柄が株式市場で買われ、米国ではNVIDIA(エヌビディア)の時価総額で過去最高を更新しているわけだ。
私たちは、まずはマクロ経済ベースで産業界単位で「筋の良さ」を見極め、その次に経営トップがまともか否かを見定める。こうした投資戦略の変化から、私自身も「経営力」を図るむなしさを幾度か考えたものだった。そもそも産業界の筋が悪ければ、経営力はほぼ意味をなさないからだ。
しかし、ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長が高い「経営力」を有することは言うまでもない。
事実アパレル業界は、「ユニクロか否かで二分化され、ファーストリテイリング1社が突出し、日経平均を押し上げるほど成長してしまったのである。
投資家が「アパレル産業だけは投資をしたくない」といっているのに、ユニクロだけは勝ち続け、ユニクロに投資したい人は数多い。
これを経営者の力量の差と云わず、なんといえばよいのか。
一般的には、天気やトレンドなど企業は等しく産業を取り巻く経営環境の影響を受けるため、経営者ができる戦略変数など多くはない。つまり、ある程度「成長産業」という下駄を履いた中で、その中でもさらに好調企業が誕生するのが普通なのだ。
しかしユニクロ、ファーストリテイリングだけは、日本のアパレル産業界全体が落ち込みつつある中、一人勝ちで成長し、今期は3兆円を超える勢いだ。
3兆円を超えれば、ZARAの背中が見えてくる。ここまで世界で成功したケースは、半導体、クルマ、昔の家電などがあったが、このユニクロのように、1社だけが突出して世界制覇を目前に踏まえ、その他のアパレルはさっぱりという事例は珍しい
「経営力」の違いを徹底して検証すべきだろう。
ユニクロの功績2 世界のコスパを日本に導入
同社の功を語るにあたり、その圧倒的なコスパについて言及せざるを得ない。ユニクロのつくる服は、プロの私が見ても百貨店のそれと何ら変わるものはない。それで、色以外はベーシック衣料ばかりだから、その圧倒的なコスパで、アパレル業界のファッション衣料の需要を奪いまくっている構図が目に入る。
しかし、そのユニクロも、ターゲットにもよるが、海外にいけば普通の価格。ものによってはユニクロのほうが高いものもあるほどだ。その意味で、ユニクロは私たち消費者に、日本にいながら世界基準の服を着る機会を与えてくれたといえる。
ユニクロの作る服は、私たち日本人の頭の中にプライスアンブレラ(値段の傘:価格基準値)をつくってしまったのだ。また、他の競合アパレルが、その倍以上の値付けで踏ん張っているものだから、価格競争にも陥らないし、むしろ、アパレルの「中価格」が、ユニクロの低価格をより一層魅力的に見せる役割を果たしている。
ユニクロの功績3 日本人の生活を服で変えた!
ユニクロの功績3つ目は、ヒートテックやエアリズムなど、防寒性や撥水性が高い機能性衣料を原料からつくり、私たちの生活の一部となり、名実ともに国民服になったということだ。とくに、ヒートテックは、持っていない人はいるのだろうかと思うぐらい、全日本人に深く定着している。同社は私たち「日本人の生活を服で変える」ほどの力をもっている
どうだろう。これが、私が考えるユニクロの光の部分だ。そして、大変僭越ながら、「罪」の部分について考察をすすめよう。
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