あの「SHEIN」を参考に、ワークマンがクイック・レスポンス生産に乗り出した狙いとは
4つの価格帯で販売した商品が数週間で完売
工場の選定にあたっては、小ロット生産ができること、商品を出荷する港に近いことを重視した。同時進行で素材の手配にも着手。同社ではこれまで、新商品を開発するにあたり、一から素材を作ることが多かったが、短納期を実現するために、既存品に採用されている生地のほか、市場に出回っている生地も同社の品質基準をクリアしていれば採用した。
パートナーの工場にはQR生産のチームを作ってもらい、急ピッチで生産・流通の体制を構築していった。その中には以前から計画生産で付き合いがあった取引工場も含まれるそうだ。具体的には「輸送期間を短縮するために、狭いエリアに集中させた工場で、複数のアイテムごとに振り分けて、一気に生産する体制を確立した」と多賀氏。
マーケットリサーチは韓国で行い、10名規模のチームを結成して弾丸ツアーを組み、日本でも人気のヤングファッションを中心に視察し、デザインに活かしたそうだ。
従来通りの計画生産を管理しながら、QR生産をスタートさせた多賀氏は 「本当に時間がない中で、これまでとはまったく違う作り方をしなければならない。時間軸が異なり、頭がごちゃごちゃになりそうだった」と苦労を振り返る。
幸運だったのは「昔から日本企業との取引がある中国の縫製工場には、日本市場向けの品質をクリアできる技術を備えたベテランのスタッフが、今も数多くいる」こと。工場を選定するうえで意識したポイントの一つであり、多賀氏は「正直、すごく助けられた」と話す。
こうしてQR生産され、店頭に並んだ新商品は10品目。2023年秋冬向けのアイテムは980円、1,280円、1,500円、1,900円という4つの価格帯で販売した。結果としては数週間でほぼ完売。多賀氏は「選んでもらえた実感がある」と手応えをにじませる。
従来のワークマンの商品と比較すれば、やや割高な印象だが、他のブランドと並べると、じゅうぶん安く感じられる。「いわゆる機能商品ではないものを、一般のお客様に選んで買っていただけた。新しい方向に舵を切り、購買層の幅を広げられた手応えを、結果を見て感じられた」と多賀氏は話す。