ユニクロの脱「一括大量生産」が、さらなる勝ち組に向かわせるワケ

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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ファーストリテイリングの2024年8月期第1四半期決算は、グローバルブランド事業以外はすべて増収増益となり予想通り、圧倒的な強さを見せつけた。定量的な部分は同社の決算報告動画で極めて分かりやすく説明されているので、私は同社の「圧倒的な強さ」の背景にあるメカニズムについて分析してみたい。

Peter Fleming/istock
Peter Fleming/istock

なぜ、ファーストリテイリングだけが
一人勝ちができるのか

 ファーストリテイリングの、特に「ユニクロ事業」についていつも感じているのは、同社の「他の競合を寄せ付けないほどの圧倒的な競争力」である。その中でも、同社の競争力の源は、素人が見てもその違いがわかるほどの圧倒的なコスパ(コスト対パフォーマンス)である。

 ユニクロは、もはや日本人の人民服といってもよいほど、「服の価格基準値」をつくってしまった。私もセレクトショップでイタリア製の服を好んで買っていたが、最近ではユニクロのデザインがよくなってきたということもあり、私のクローゼットの中のユニクロ比率は増える一方である。

 私は前号で、「女性は服が大好きだ」と述べたが、極めて感覚的な意見を言えば、おそらく日本人の80%から90%ぐらいは、現在、あまりファッション性の高い服は求めていないのではないかと感じている。もともと奇抜なファッションは、若者を中心にして広がっていくのだが、いまその役割を担うべきZ世代が経済的な理由や将来不安を抱えるなか、高額な衣料品を買うことは無駄だと感じ、貯金や投資などに金を回す。

 見方を変えれば、成熟経済下では人はファッションモデルのような格好をせず、慎ましやかに自分を飾ることなく、かといって、耐久性のしっかりした機能素材を使うわけだ。

 やや誘導尋問的かもしれないが、このように考えると、今の日本の、そして、先進国の大多数の国民にとって「ユニクロ」は、時代感覚がピッタリなのである。もちろん、いつの時代にも奇抜なファッションに身をつつんだり、高額衣料品に手を出す殿上人のような人もいるが、割合は年々減ってきているように思う。特に日本人は他人とあまりに違うファッションをして、目立つのを嫌うためざっと周りを見渡して「平均的な服=ユニクロ」となって、「ユニクロで買っておけば間違いない」となっているわけだ。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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