成長に黄信号 生鮮宅配の王者・生協「次の一手」とは!?=日本生協連 嶋田専務
店舗事業は規模を維持まずは収益性の改善へ
──その一方、店舗事業の供給高については、供給高全体に占める割合が3分の1を下回るようになっています。今後の店舗事業のめざす方向を教えてください。
嶋田 店舗事業は、既存店の改装、新規出店を計画的に進めてきた結果、低下傾向にあった供給高が近年は回復しつつありました。しかし、17年頃から競合SMや他業態の出店攻勢の影響を受けています。こうしたなか、現段階で供給高を大きく拡大していくのは難しいでしょう。現在の規模を維持しながら、まずは収益性の改善に努めていきます。
日本生協連は11年に策定した20年までにめざす生協像「2020年ビジョン」において「各地域で過半数世帯の参加」を掲げています。こうした地域シェア向上を図るなかで、店舗は未加入者を含めて地域の人々とつながるための接点の1つとして重要な存在です。今後は事業全体での成長をめざし宅配事業との相乗効果もより発揮させていくべきだと考えます。
──店舗事業の経営改革に向けて、どのような取り組みを行っていますか。
嶋田 店舗事業のほとんどは、地域生協ごとに“孤軍奮闘”しているのが現状です。そこで20年度から、日本生協連の事業支援本部が事務局となり、各地域生協の店舗事業を横断的につなぐ会議をスタートする計画です。地域生協の専務クラスに参画してもらい、各生協の店舗事業を比較、分析し、構造改革や課題解決に取り組みます。
これまでにも日本生協連では、総菜部門の競争力の高さに定評のある、いわて生活協同組合(岩手県/飯塚明彦理事長)をフィールドに原料調達から商品企画、利益管理までを学ぶ「総菜学校」を実施し、参加生協の粗利益率の改善や品揃えの強化につなげている事例があり、こうした取り組みも積極的に進めていくべきでしょう。
“ダサい”印象を払拭しライフスタイルの1つになる!
──10月以降の消費税増税ではどのような影響が出ていますか。
嶋田 軽減税率の導入や「キャッシュレス・ポイント還元事業」の実施により、多くの消費者が混乱し、小売業者も戸惑っています。宅配事業では、8月以降に衣料品や住居関連品の供給高が多少伸びましたが、14年の8%への消費増税時と比べると駆け込み需要は小さく、一方で増税後は供給高が落ち込んでいます。
中小規模の地域生協の店舗事業と宅配事業の一部が「キャッシュレス・ポイント還元事業」の対象となっていますが、実際にポイントを受け取れるのは数カ月先というケースもあり、現段階でそのメリットを大きく感じている組合員は少ないでしょう。国の制度に左右されるのではなく組合員との信頼関係を地道に構築していくことが望ましいと考えています。
──生協の課題の1つである若年層の獲得はどのように進めていきますか。
嶋田 若い世代は、「オーガニック」「エコロジー」「エシカル」といった分野への関心が高い傾向があります。SNSなども活用しながら、若い世代にとって訴求力のある商品をアピールしていくことがポイントでしょう。
さらに、生協を利用することに対して“ダサい”というイメージが少なからずあるようです。商品を運ぶケースのデザインを洗練されたものに変更するなどにより、生協を利用することが時代に合ったライフスタイルの1つとされるような工夫を進めていきたいと考えています。