メニュー

イズミ、中期経営計画修正
浮き彫りになった重要な課題とは!?

西日本の雄、イズミ(広島県/山西泰明社長)が4月9日発表した2019年2月期決算は微増収減益。同日、中期経営計画の修正も発表した。その骨子は、前回発表時と比べて、大幅にトーンダウンした内容となったが、厳しい競争環境を鑑みた現実的なものに落ち着いた。

中期経営計画を大幅に下方修正、その意味は!?

 イズミが201710月に公表していた中期経営計画(2018-2020年度)は最終年度の2020年度に営業収益9000億円・営業利益率6%をめざすという意欲的なものだった。計画を発表した期、すなわち182月期(17年度)は営業収益7481億円で営業利益率5.4%を見込んでいたものの、営業収益の実績は7298億円と大きく未達。中期経営計画スタートの発射台そのものが、当初より低いものとなり、クリアへのハードルは高まっていた。

 今回イズミは同計画最終年度の営業収益を8200億円、営業利益率5.4%へと下方修正した。当初の9000億円・6%は2年後の2022年度に持ち越した。

 その計画の中身は具体的に、どういった理由から、何がどう変わったのだろうか?

 大きな理由として、得意な総合スーパーでは圧倒的な強みを発揮している一方で、食品スーパーにおいては、「総合スーパーをベースに小型化しているので投資額も高いなど、当社は比較的不得手としている」(イズミ財務・経理部長の川西正身氏)点が挙げられよう。

 卓越したテナントミックスの売場づくりと専門店顔負けの総菜や生鮮を提案する食品売場を武器に、イズミの「ゆめタウン」戦略は競争優位性を持っている。それがゆえに、構造不況に陥った総合スーパー業界で一人気を張る格好で、イトーヨーカ堂や西友から不振店を譲り受け、再生を果たしている。たとえば「ゆめタウン姫路」は当初の予定を上回る好調ぶりが伝えられており、『ダイヤモンド・チェーンストア』誌のストアオブザイヤーでも堂々5位にランクインされる注目度の高さをみせている。

 その一方で、食品を大きく取り扱うドラッグストアの出店競争にもさらされ、食品スーパー事業では思うように競争優位性を発揮できていないのが実情だ。

 それを受けて、当初3年間で40店舗の新規出店という計画は、15店舗へと大幅に減らす。この数字には総合スーパーと食品スーパーの両方が含まれているが、このうち総合スーパーについては「積極的な出店」を継続。食品スーパーのみ「物件を厳選」し、大幅に絞り込む。


次のページ
年間200億円の投資額は変えずその内訳を大きくシフト! 

年間200億円の投資額は変えず
その内訳を大きくシフト!

 ただし、年平均200億円を計画していた投資額自体は維持し、投資計画の中身を大きく変えた。イメージとして、これまでは半分以上を新店投資に割く計画だったが、これを既存店活性化と居抜き出店、M&A(合併・買収)、店舗譲受の割合を増やす。

 投資リターンを考えたときに、確実な収益が見込める物件以外は出店せず、「確実な投資リターンが見込める活性化とM&Aなどにシフトする」(同)。

 既存店活性化では、大型店5店舗に加え、中小型店30店舗で改装を実施。後者ではとくに総合スーパーの中型店を中心に行う。

 食品スーパーへの新店投資を抑制することで、相対的に売上の伸び率は鈍化する。既存店活性化で増加する売上は、当然新店から得られる分よりも少ないからだ。そのため、売上高増加率は7%以上としていた当初計画から、5%以上へと引き下げた。

 中期経営計画中に重要になるのが、食品スーパーフォーマットの確立だ。総合スーパーの縮小版ではなく、損益分岐点の低い、新しいフォーマットづくりに本格的に取り組む構えだ。そのため、先進的な食品スーパー企業に人材を派遣し、運営ノウハウを学ぶといったことも行う。こうしたことを通じて、既存食品スーパーの利益率を倍増させたい考えだ。

 

 皮肉なことだが、他の有力総合スーパーと違い、本業である総合スーパーが強いばかりに、食品スーパーの改革が遅れがちになったと言えなくはないだろう。中期経営計画の隠れた最大のミッションは、食品スーパーの確立といっても過言ではないだろう。それが達成されたとき、イズミの座は盤石なものとなるはずだ。