社会構造転換の分水嶺の時代を「価格革命」で勝ち残る!=アークス 横山清 社長

聞き手:大木戸 歩
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 その1つの例が当社の「ビッグハウス」業態で、ローコスト体質の店舗で成功してきました。「ビッグハウス」は、粗利益率16%で3%以上の利益を 出しています。アイテム数を従来のSMの3分の1程度に絞り込んだ単品大量販売によって、低価格を実現するというコンセプトです。

 ローコスト経営は、本社部門も例外ではありません。昨年移転したこの新社屋も築14年の建物への居抜き移転で、不動産コストを抑えている。私には専属の運転手もいないし、社用車もない。電車やタクシーで移動していますよ(笑)。

 こうしたローコスト経営で価格訴求の原資をつくり、薄利多売で安く売って競合を制し、その分のシェアを獲得して利益をさらに高めていく。そのための歴然とした価格訴求ができる仕組みをつくろうと考えています。

粗利益の確保と、強烈な価格訴求を
両立できるのが「価格革命」

──今年の年頭所感で、横山社長は今の時代への危機感を「恐慌前夜」と表現し、これを「革命的な価格とサー ビスで乗り切る」というスローガンを打ち出していますね。かつて、ダイエー(東京都/西見徹社長)の創業者の故・中内氏が繰り返した「価格破壊」という 言葉が広く知られています。これに対して「価格革命」とは、何を意味するのでしょうか。

横山 中内氏の言う「価格破壊」は、平たく言えば、小売企業がメーカーとの取引の中で、いかに有利な仕入れ条件を引き出し、売価に還元できるかという話です。

 一方の「価格革命」というのは、お客さまに対して歴然とした価格訴求ができ、なおかつ小売業側も粗利益を確保できる仕組みづくりが前提にありま す。具体例をあげるなら、ユニクロ(山口県/柳井正社長)がわかりやすいですね。今まで消費者が1万円、2万円で当然だと思っていたものが、3000円で 買えるようになったのだから、これは画期的なことです。

 今の時代、ユニクロで3000円の商品と同素材、同機能だけれども、「デザインに凝ったから付加価値分を含めて3万円」というのは、通用しなくなってきたわけでしょう?

 私たちはSPA(製造小売業)ではないけれども、この考え方は、食品にも当てはまるものだと考えています。

──食品業界でいうと、流通各社のプライベートブランド(PB)が、昨年あたりから消費者に急速に浸透しましたね。

横山 そうですね。最近の単品データを分析してみると、トップブランドとPBのシェアが逆転してしまう現象が起きてきました。カテゴリーの30%、40%のシェ アを握るPBまで出てきたほどです。その影響で、一度は値下げしたナショナルブランド(NB)商品の価格も、さらに下がっています。これは、ひとつの「価 格革命」だと感じました。

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