低価格戦略見直し、MDで差異化、食のインフラ化で需要創造=コープさっぽろ 大見英明 理事長
見方を変えると、1年間で4万人がやめるということは、過去に生協を利用したことがある、または生協をよく知っているという方が数十万人(世帯)いる計算になります。この層を再び組合員にできる可能性があります。
また、これまでの宅配事業や店舗事業ではカバーできていなかった需要を取り込むために新しい事業を立ち上げ、新規組合員の獲得も図ります。
──新しい事業とは、どういったものでしょうか?
大見 コープさっぽろは、今後の事業の方向性として北海道の「食のインフラ」になることを掲げており、その一環として10年度に立ち上げたのは、移動販売車の「おまかせ便」と、夕食を宅配する「コープ配食サービス」です。
まず、ひとつめは10年10月から本格的にスタートさせた「おまかせ便」です。北海道には過疎化が進んだために小売業の店舗がほとんどないエリアがたくさんあります。調べてみると約40万人がそういった「買物不便地域」に住んでいることがわかりました。
「おまかせ便」は、2トントラックに1000SKUを積み込み、店舗を基地に過疎地を巡回するというものです。現在、111ある店舗からクルマで1時間圏内の範囲で移動販売を行うとすると、買物不便地域の約70%、約28万人を移動販売車でカバーできる計算になります。
──移動販売に取り組む小売企業は日本全国に少なくありませんが、事業としては利益を上げていません。
大見 コープさっぽろの場合は、利益をしっかりと確保しています。
実は、移動販売事業はこれまでにも行ってきました。1997年に解散した夕張市民生協が実施していた移動販売事業をコープさっぽろが引き継いだのです。財政破たんした夕張市は、過疎化の進行とともに生活の足となるバスの便数が減り、高齢者を中心に食品スーパー(SM)などに出かけることができない“買物難民”が増えていました。そのような中で粛々と移動販売事業を行っていたのです。移動店舗となるトラック1台の1日の供給高は約10万円で、直接事業剰余金(民間企業の営業利益に相当)もしっかりと出していました。本格展開しても事業として利益を出せるめどがついたことから「おまかせ便」を開始したのです。11年8月末までに移動販売車21台を投入する予定で、2~3年後には100台態勢にしたいと考えています。