強固な“店長連絡網”を活用!経営トップによる「店舗巡回」で効果を出す方法とは

千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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店長間の強固な情報網を活用?

 創業者の故・中内㓛さんが勇退した後に、ダイエーの社長に就任した某氏は、毎週末を店舗巡回に当て、精力的に店回りをこなしてきた。約2年半での通算巡回自社店舗数は700に及んだ

 ある日、その社長は「何かヘンだぞ」と現場のホスピタリティに疑念を抱くようになった。昼食を取ろうと、店舗内の社員食堂に立ち寄ると、必ず大好物の「ひじき」が出迎えてくれるようになったからだ。

 思い当たるふしはあった。以前、ある店舗の社員食堂で「ひじき」が出されたときに、「僕はひじきが大好きなんだ」と漏らしたことがあったのだ。よくよく考えると、それを契機にして、どの店舗でも「ひじき」が出されるようになった気がする──。

 ここで、話は中内㓛さんがトップに君臨していた時代に遡る。

 当時のダイエーは、良い意味でも悪い意味でもトップダウンの企業。中内さんが店を回れば、そこでの指摘や発言は、一挙に全国の店舗を駆け抜けた。

 全社として取り組むべき課題もその店舗限定の課題も渾然一体となって、売場は中内さんの言葉を起点として、右に倣えで変わった。カリスマに対する“畏怖”が店長ネットワークをつくりあげていたためだ。

 その社長はひらめいた。「中内さんがいなくなったいまも、ダイエーには、強固な店長情報網が残っているんじゃないか?」。

 ならば、とばかりに社長は、この情報網をうまく活用することに知恵を絞った。たとえば、当時のダイエーが全社的に推進した「関連販売」の方法を巡回の際に指摘すれば、店長情報網に乗るに違いない。中内さんとの違いは、全社的にやるべき課題のみを指摘することだ。

 その社長の思惑はまんまと当たり、1店舗での指摘は、多くの店舗での水平展開につながったという。

 やはり、現場(=売場)に行かなければわからないことはヤマほどあるということがわかる。

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記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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