PLM大失敗で巨額のサブスクフィーを払い続けるアパレルを救う唯一の方法

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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「やってしまった」PLMをどう正常化させるか

Akash Sain/istock
Akash Sain/istock

「やってしまった」PLMを正常化させる方法は極めて難しい。
 まず、なにより、PLMをここまでデタラメに導入してきた戦犯達をチームから外すことだ。自社でやりたい気持ちは分かるが、実際に大がかりなシステムをストップさせた責任は重い。また、人は自分のやり方を絶対に変えようとしない。これは、マネジメントの世界では「モメンタム」(勢いや方向性がついてしまうこと)といって、頭では正しいやり方を理解しても、カラダはそのように動かない。

  代わりに、世界の潮流、アパレルの最新業務の標準形、商社政策について正しい知識をもっている戦略コンサルタントを中心に頭の柔らかいチームを社長直下に組成させる。社長はとくにPLMに明るくなくて良い。難解なデジタル用語をわかりやすい言葉で説明させて、正しい判断をしてゆく。次に、どの程度システムの設定が終わっているのか、どの程度事業部や強力企業を巻き込んでフィット&ギャップをやっているのか調査し、リカバリ可能なのか、全償却してやりなおさなければならないのかを判断する。
 私は「せっかくつくったのだから、これを使ってやって欲しい」という言葉を何度も聞いたが、そんなことができるはずがない。こうした無理な仕事はコンサルタントは受けてはならない。

  ベンダーからの提案ですでにPLMを完成させてしまっているときは、残念ながら、初期導入コストおよび検収後のミニマムフィーは払い続けるか、それとも違約金をはらってでも償却するかを決める。そして、目的設定からやり直す。戦略コンサルタントは高額なファームになれば数千万から数億円というフィーになるが、動かないシステムで毎月、毎年払っているフィーと初期投資を考えれば、むしろ1億円払って戦略コンサルを雇って正しくPLMが動くようになる方がROIは成立する。

PLM導入の目的は業務が楽になることでなく
SCMの全体最適

 それでは、PLMの導入目的は何か。これは、多段階に分かれる複雑なサプライチェーン全体の見える化、および、付加価値分析(サプライチェーンに組み込む必要があるのかを確認する)。そして、これらの無駄を排除したあとに商社との取り組み方針を将来に亘って検討し、商社と工場を23社に集約し、もっともマスボリュームとなるサプライチェーンにPLMを導入すること。それによりPOC (Proof of concept: スモールスタート)を行い、トータルで納入される商品の製造コストがどれだけ減るのかROIを正しく計算し横展開することだ。とくに、無駄なサンプルや残反、残品をゼロにすること。これらはすべて工場か商社から出荷される製造コストに上乗せされている。

 そして、定番商品のVMI (Vendor management inventory サプライヤーが在庫水準点を見ながら自由に出荷をする手法)や、店頭と工場をつないだパーソナルオーダーなど、究極には工場と店頭、ECをダイレクトに結ぶ「おおきなD2C」を実現する。同時に、複数の工場を活用し、ECやリアル店舗のクロスプレイにより、それらが工場の入口であり、出口になるような形態をつくる。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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